ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

商品別販売実績管理表で商品データを定期分析しよう【no.2036】

 「数値管理表」とともに、活用したいのが「商品別販売実績管理表」です。派生した「カテゴリ別販売実績管理表」もEコマース運営の指標として有効です。今回は「商品別販売実績管理表」と「カテゴリ別販売実績管理表」を紹介します。

*ネットショップの成長はやはり商品が命!

 ネットショップの店長として6年間、コンサルタントとして11年間。Eコマースに携わって思うのは、事業が成長するか否かのカギは商品だということです。

 商品ページの作成や画像の加工。商品説明文の執筆。インターネット広告を使った集客。トレンドや季節に合わせた販促企画。SNSを活用した認知度アップ。送料対策や発送の短時間化。ネットショップのマーケティングは多岐にわたります。しかし、あくまでベースになるのは商品力。商品力がなければマーケティングを活かすことはできません。

 自社で取り扱っている商品の良さ、魅力、有用性を一番知っているのはECを運営している担当者のはずです。コンサルタントとして意見はできても、あくまでアドバイスのひとつ。我々がサポートできるのは「データから知れる」お客様の反応だけです。

 それが「商品別販売実績管理表」と「カテゴリ別販売実績管理表」です。

*「商品別販売実績管理表」と「カテゴリ別販売実績管理表」の考え方

 「商品別販売実績管理表」と「カテゴリ別販売実績管理表」。これは商品ごとの「アクセス数」と「受注件数」。そして「転換率」と「売上」を一覧にみられるようにしたものです。まずはこの分析の考え方から紹介をします。

 ECは「アクセスが集まっているページ=売上が高いページ」になりがちです。ほとんどのネットショップにおいて「アクセスが集まっているページ=売上が高いページ」が成り立ちます。

 「アクセスが集まっているページ」。これはお客様にとって魅力がある商品。お客様にとって(他店に比べ)差別性がある商品。はたまたお客様にとって自社のネットショップに至る「導線」になっている商品。これらの可能性があります。

*「導線」になっている商品ページが負けると、売上は激減する

 ネットショップにおいて「売上がある商品」は「アクセスがある商品」です。そしてなおかつお客様からの「導線の商品」であるケースがほとんどです。特にショッピングモールのEコマースの場合。「導線」の商品ページが競合に狙われると、オセロのように売上がひっくり返ります。

 結果、売上が激減します。ネットショップ自体が「負のサイクル」入ってしまうのです。「導線の商品」が競合ネットショップに叩かれるとアクセスが集まらなくなります。ネットショップの他の商品ページにもお客様が流れていかなくなります。結果、インターネット上での商品ページの露出がさらに少なくなります。そうなるとさらに「導線」は弱くなり・・まさに「負のサイクル」です。

 「商品別販売実績管理表」をチェックすることで「導線」商品の状況を確認し、状況が悪い場合は早めに対策を打った方が良いわけです。「商品別販売実績管理表」をみることで異変に気付く環境をつくりましょう。

*特定の商品ページの閲覧数がトップページを超えることも

 ネットショップのページ別閲覧数を見るとわかることがあります。ネットショップにアクセスするお客様は必ずしもトップページを閲覧しません。特定の商品ページの閲覧数(PV)がトップページを超えているところもあるでしょう。

 これが実店舗ならばお客様の入り口はほとんどの場合はひとつだけです。ネットショップはトップページだけではなく商品ページもお客様の入り口になります。この「導線」を失ってしまうことは、ネットショップにとって大打撃。常にその様子をチェックしておきましょう。

*ネットショップの商品を4つに分けて考える

 「商品別販売実績管理表」の活用。これはネットショップのマーケティングの原理原則とつながっています。「まずはコンテンツを出してみる。出してみてからデータを取って、良かったもの悪かったものを選別する。良かったものの傾向に合わせてまたコンテンツを出してみる」。この原理原則です。

 「商品別販売実績管理表」を作成して商品ページを4つに分けて考えます。「アクセスがあって、かつ売れている商品」「アクセスがあって、あまり売れていない商品」。「アクセスが少ないが、売れている商品」「アクセスが少なく、かつ売れていない商品」。この4つです。

 「売れている」「売れていない」の定義は「転換率」でも良いかもしれません。しかし転換率は「単価の高い商品は低く」「単価の低い商品は高く」なりがちです。ですので「売れている」「売れていない」と表現しています。「転換率」と「商品単価」をみつつ、自社内で定義をしてください。

 ここでポイントになるのは、「アクセスがあって、あまり売れていない商品」。「アクセスが少ないが、売れている商品」。このふたつです。

*「アクセスがあって、あまり売れていない商品」の対策を考える

 まずは「アクセスがあって、あまり売れていない商品」です。

 「商品別販売実績管理表」をアクセス数順に並べます。アクセスは上位にいる、しかしあまり売れていない商品を発見することができます。しかしアクセスはされているわけです。検索にヒットしていたり、サムネイルの画像に引きが強かったり。お客様が商品ページ訪れる理由はしっかりあるはずです。問題はアクセスされているのに注文につながらないこと。

 可能性として考えられるのは、商品ページ内での提案、商品説明文、画像や動画を使っての使用イメージ、課題解決や目的の明確化、想定ユーザー(ペルソナ)などへの情報が足りないこと。または情報にズレが生じている可能性があることです。市場・競合に明確な「比較対象商品」があり、注文を取られているのかもしれません。

 まずは商品ページを見直すこと。そして競合商品を調査し「選ばれない理由」をつぶしていくこと。この対策をしていきましょう。「アクセスがあって、あまり売れていない商品」を「アクセスがあって、かつ売れている商品」に転換させることができれば、ネット上に新しい「導線」をつくることができます。

*「アクセスが少ないが、売れている商品」の対策を考える

 次に「アクセスが少ないが、売れている商品」です。こちらも「アクセスがあって、売れている商品」にジャンプアップさせていきます。

 「商品別販売実績管理表」をながめていると、「この商品って意外と売れてるんだなぁ」という商品を発見することができます。「商品別販売実績管理表」は定期的に作成しデータ分析を繰り返していくものです。データを比較すると「あれーこの商品ってなんか好調だよね」と気がつくでしょう。

 「アクセスが少ないが、売れている商品」に足りないのは「露出」です。ネットショップ内での露出を強化する。インターネット広告をかける。SNSで情報発信をおこなう。これらによってことで日の目を見る可能性があります。ただし、新作商品の場合は露出により「アクセスがあって、かつ売れている商品」になる可能性がありますが、旧作商品の場合は季節性やトレンドにマッチして「一時的に売れる」状態になることもあります。

*「アクセスがあって、かつ売れている商品」になる商品を探す

 「アクセスがあって、あまり売れていない商品」を改善したとして、必ずしも「アクセスがあって、かつ売れている商品」になるわけではありません。仮に商品ページでの提案を強化したとします。しかし「意外に売れなかった」ということはありえます。そもそもの商品力がそこまでのレベルではなかったケースです。

 また「アクセスが少ないが、売れている商品」の露出を強化したとします。必ずしも「アクセスがあって、かつ売れている商品」になるわけではありません。「売れている」のは「欲しいお客様が頑張って探した」からです。露出を強めるほど「一般ウケ」する商品ではなかったという可能性もあります。

 大切なのは「アクセスがあって、かつ売れている商品」=「ヒット商品」をつくるために「商品別販売実績管理表」を使ってEC更新し続けていくことです。また「ヒット商品」までいかない商品力でも、1か月10個の販売を13個に押し上げることです。これによってネットショップの「土台」が変わってきます。

*ネットショップの成長は「ヒット商品」をいくつ作れるか

 販売する商品がすべて同じように売れるネットショップはありません。売れる商品は一定のものに偏ります。この売れ筋商品がネットショップへの「導線」になります。この「導線」がネットショップに何本はられているか。そしてどのくらいの太さなのか。これがネットショップの成長に大きく関わります。

 ジャニーズ事務所が「光GENJI」「SMAP」「嵐」とヒットグループを重ねていったように。ユニクロが「フリース」「ヒートテック」とヒット商品を重ねていったように。お客様は「ブランドを知り、商品を知る」のではありません。「まずは商品を知り、その後にブランドを知る」のです。やはりまずは「ヒット商品」をつくることです。

*「商品別販売実績管理表」の数値項目

 「商品別販売実績管理表」は以下の項目で作成をしていきます。いずれもECシステム、モールのシステム、Googleアナリティクスなどのツールから取得可能な数値項目です。

・商品番号

 ネットショップで販売している商品を管理する番号です。商品ID、商品管理番号、商品コードなど会社によって呼び方はそれぞれだと思います。慣れている項目名を使用してください。商品番号は過去データとの引き当ての際にも活用します。

・商品名

 ネットショップで販売している商品の商品名です。ネットショップに登録している商品名を引っ張ってきても良いです。自社システム内の商品マスターから商品番号をキーにして商品名を引っ張ってきてもらっても構いません。

・アクセス人数

 当該商品の商品ページの期間内アクセス人数の集計を入力します。「商品別販売実績管理表」を分析する頻度にもよります。通常だと2週間分で1回もしくは1か月分で1回です。こちらは「ページビュー」ではなく「アクセス人数」にしてください。

・販売件数

 当該商品の商品ページの期間内販売件数の集計を入力します。「商品別販売実績管理表」を分析する頻度にもよります。通常だと2週間分で1回もしくは1か月分で1回です。こちらは「販売個数」ではなく「販売件数」にしてください。1人のお客様が100個購入しても、1件です。

・転換率

 当該商品の商品ページの期間内転換率を入力します。こちらは同エクセルの「販売件数÷アクセス人数」で自動計算をしてもらって結構です。「ページ転換率」ということになります。

・販売価格

 当該商品の商品ページでの販売価格を入力します。期間内にキャンペーン、割引があった場合は定価を入力するかキャンペーン価格にするかを迷うところ・・。ですが、期間内に丸々キャンペーンが重なってなければ定価で結構です。(ミーティング内でキャンペーン、割引の情報を確認できればOK)

・売上

 当該商品の商品ページの期間内の売上を入力します。基本的には「販売価格×販売個数」になります。キャンペーンや割引で価格が変更した場合は別途集計が必要です。注文履歴のデータベースを集計して、売上を算出してください。

 「商品別販売実績管理表」の基本項目としてはこの7項目で十分です。ここからスタートしていってください。

*「商品別販売実績管理表」は「同一期間同一条件」で作成

 「商品別販売実績管理表」は2週間に1回もしくは1か月に1回作成します。期間の区切り方は社内のミーティングの開催日時や曜日で決めてもらって構いません。大切なのは「同一期間、同一条件」にすること。

 「同一期間」とは2週間に1回ならば、集計の期間を14日間でそろえること。1か月に1回ならば30日間でそろえた方が過去と現在のデータを比較しやすくなります。特に毎年2月は28日間で3月は31日間ですから、そもそもの期間がそろいません。期間がそろっていないと数字が比較できないわけです。

 「同一条件」とは期間のスタートとエンドの曜日をそろえることです。例えば2週間に1回の「商品別販売実績管理表」のデータ作成。月曜をスタートにして2週間後の日曜をエンドにする。毎回これを「同一条件」にすれば問題ありません。あるときは月曜スタートの日曜エンド、あるときは水曜スタートの火曜エンドにすると条件が異なってしまいます。

 もちろん2週間で集計したものと3週間で集計したものを比較するのももっての他です。これだと分析になりません。

*「商品別販売実績管理表」の運用方法

 なぜ「同一期間同一条件」でデータを集計するか。過去と現在の「商品別販売実績管理表」を比較するためです。比較をすることで商品データの動きが見えるようになってきます。

 「商品別販売実績管理表」は前回集計した2週間のデータと、今回の2週間のデータを並べて分析します。探すポイントはふたつのデータを比較して、「数字が上がっている商品」を探すことです。「数字が上がっている商品」の「数字」とは、「アクセス数」「転換率」。そして「商品別販売実績管理表」の中での順位のいずれかに注目して探してください。「商品別販売実績管理表」は「アクセス数」の降順で分析すると頭に入りやすいです。

 「数字が上がっている商品」を見つけたら原因を考えます。「自分たちが何かしらの改善を行った結果(=内的要因)」。「自分たちが行った改善とは関係なく数字が動いた(=外的要因)」。ふたつの原因が考えられるはずです。ここからは「実行数値管理表」の運用と一緒です。

*目指すところは「導線」の強化と「ヒット商品」の開発

 「商品別販売実績管理表」を見続ける目的は「導線」の強化と「ヒット商品」の開発です。

 ネットショップの「導線」になっている現在のヒット商品が保たれているか。さらに強い「導線」にするための施策は成果に結びついているか。「アクセスがあって、あまり売れていない商品」。「アクセスが少ないが、売れている商品」。いずれかを発見し、テコ入れが成果に結びついているかを確認します。

 データの比較を続けていると、「違和感」のある動きをする商品が出てきます。数字の動きには必ず何かしらの理由があるはずです。「調べたけどわからなかった」になる可能性もあります。しかしダメ元でも探してみましょう。

*「カテゴリ別販売実績管理表」の作成と運用

 「商品別販売実績管理表」の派生版でもある「カテゴリ別販売実績管理表」。その作成方法はほとんど変わりません。

 唯一「商品別販売実績管理表」と異なるのは「商品カテゴリごとの集計」になる点です。データベースのない会社は集計するのが少々手間になるかもしれません。商品マスターの整備などで簡単に商品カテゴリ集計ができるように準備をしましょう。集計に手間がかかると、データの作成から自然に手が遠のいてしまいます。

 「カテゴリ別販売実績管理表」はネットショップの商品カテゴリだけではなく、価格帯や素材、新規とリピート、男女別、発送先別、複数買い商品など、様々な形に姿を変えて分析をすることができます。自社の売上のキーになりそうな切り口を探してみてください。

 最後に「カテゴリ別販売実績管理表」の運用についてです。「同一期間同一条件」の原則を守って、定期的にデータを作成しましょう。あくまでデータ分析は「過去と現在の比較」です。2週間に1回もしくは1か月に1回作成をして、比較しながら変化と根拠(=内的要因&外的要因)を探します。

「商品別販売実績管理表」と「カテゴリ別販売実績管理表」の作成と運用、ぜひ実践されてみてください。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。