ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

年商1億円のECサイトを目指すための手引き。1【no.2120】

 EC事業を自社の「事業の柱」に育てるとき、最初の目標が「年商1億円」ではないでしょうか。実際に、ご相談を受ける大手企業でも、「まずは年商1億円」という言葉が出てきます。月商1億円のEC事業、これが今回のコラムのテーマです。(続編として、年商3億円、年商10億円‥なども書いていきます)

因数分解のポイントは「客単価」

 年商1億円をよりリアルに感じるために、数値を因数分解してみます。年商1億円は月商にすると約800万円です。しかし通常、多くのEC事業は年間で売上の波があります。年商1億円のネットショップであれば、月商の幅は500万円~1,500万円程度でしょう。クリスマスや母の日などは、通常月の2~3倍に注文が増えるショップもあります。イベントごとに合わせてかなり波があることが多いです。ひとまず、ここでは月商800万円を基準とします。

 月商800万円を売上の公式に合わせて因数分解してみましょう。ご存じのとおり、売上の公式は「売上=アクセス人数×転換率×客単価」です。アクセス人数はセッション数、転換率はCVR(コンバージョンレート)とも呼ばれます。今回のコラムではアクセス人数、転換率の名前でお伝えしていきます。

 この売上の公式の因数分解をする場合、ポイントになるのは「客単価」です。客単価とは、お客様の1注文あたりの平均購入金額であることはご存じのとおりです。では、なぜ客単価がポイントになるのか。それは、EC事業で取り扱う商材(とその価格帯)によって、あらかたの客単価は決まってしまうからです。

客単価の目星をつける方法

 ネットショップの客単価は商材(とその価格帯)によって変わります。

 たとえば、スニーカーを販売しているネットショップの場合、客単価は8,000円~12,000円ほどになります。ゲームソフトを販売しているネットショップならば、5,000円~10,000円の間に収まることがほとんどでしょう。食品のカテゴリで、たとえばケーキのショップであれば3,000円~5,000円が客単価のレンジになります。もちろん、スニーカーでも高級のスニーカーもありますし、ケーキブランドのショップもあります。その場合はそれに合わせて客単価も高くなるのですが、基本的に商材(とその価格帯)で客単価は決まるのです。

 だいたいの客単価の目星をつける方法があります。ネットショップの中には売れ筋商品があります。この商品の調べ方は様々ありますが、その方法は今回のテーマからは逸れるので書きません。その売れ筋商品よりも「少し高い金額」に客単価は収まりやすいのです。たとえば、スニーカーのECサイトにおいて、もっとも売れ筋の商品が「8,000円」のスニーカーであれば、客単価は「12,000円前後」になる。そんな見立てです。

ECは「複数買い」になりにくい

 なぜこのロジックが成り立つのか。

ネットショップは圧倒的に売れ筋商品に引っ張られるからです。売れ筋の商品数点の注文が上位を占める傾向にあります。そして、売れ筋商品の価格帯が大きくばらけることはありません。また、売れ筋商品の価格帯が「ショップ内で高い価格帯」になることもありません。どちらかといえば、「ショップ内で低い価格帯」になるはずです。ですから、売れ筋商品群の価格帯の「少し高い金額」に客単価は収まりやすいのです。

 もうひとつ。ECというショッピングスタイルが「1品での決済」になりやすい業態であることも理由です。つまり、「複数買い」になりにくいのです。皆さんもAmazonや楽天で購入する際、特に理由がなければ「1品での決済」で購入することが多いのではないでしょうか。スーパーのように10品、20品をカートに入れて購入することは、ECでは稀です。

 ただ、可能性があるとすれば、商材の単価が著しく「低い」場合、極端な複数買いがありえます。商品単価が200円~500円ほどであれば、お客様に「わざわざ送料を払って、配送を待つのも・・」という心理が働くのです。たとえば月商800万円のネットショップで、商品単価が200円というのは、相当なレアケースになります。

(つづく)

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。