ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

攻めのECの時代から「守り」のECの時代へ。3【no.2132】

(前回のつづき)

 既存ビジネスのある企業にとって、今後のEC戦略は「守りのEC」になる。特に、リソースが限られる中小企業のEC事業は「守りのEC」から、いかに「カウンター攻撃」のチャンスをうかがうかだ。そのポイントになるのは「商品企画とタイミング」にある。

まず「すでにある市場」を狙う

 前回のコラムの後半で書いたとおり、商品企画には「新しいニーズにこたえる商品」と「他と比較して選ばれる商品」のふたつがある。まず検討するべきなのは「他の比較して選ばれる商品」になる。「他と比較して選ばれる商品」を狙いたい理由は、「そこにはすでに市場があるから」に他ならない。すでに市場があるならば、「選ばれる」ことができれば売上は自ずと付いてくる。

 「他の比較して選ばれる商品」は「つくる」というより「改善」もしくは「アップデート」になる。ここはECMJコラムで何度も書いているので具体的な手法は割愛するが、シンプルに考えれば「同じ価格で、デザイン性・ブランド性・機能性いずれかが改善・アップデート」できれば比較の末に選ばれる可能性は高くなる。「デザイン性・ブランド性・機能性が同じで、価格が安くなる」を狙う戦略もあるが、これは資本力のある企業向けだろう。

「市場の変化」こそ、カウンター攻撃を仕掛けるチャンス

 ポイントとして挙げた「商品企画とタイミング」。商品企画とともに重要なのが、「タイミング」である。この攻め(いわばカウンター攻撃)の「タイミング」を見定める方法、と商品企画における「新しいニーズにこたえる商品」を考える方法、実はこのふたつは同じ行動のもとにおこなわれる。それは継続的にデータと情報を浴びつつ、そこに対する所感を議論することがベースになる。

 ご存じのとおり、「的当てゲーム理論」など、ECMJがもっとも重視しているマーケティングの考え方であるが、ECビジネスとは「データ活用」である。そしてデータ活用の精度をより上げるのが情報管理である。「守りのEC」を展開していく中で、お客様のストレスがない程度にECサイト運営をアイドリングさせる一方、EC運営者は常にデータをウォッチし、情報を浴びて「市場の変化」を探していかなければいけない。この「市場の変化」こそ、自社がカウンター攻撃を仕掛ける「タイミング」であり、「新しいニーズにこたえる商品」を生み出す源泉になる。

 いまここではあえて、「EC運営者は常にデータをウォッチし、情報を浴びて」と書いたが、これはあくまで「事業経営者はできている」ということを前提に書いている。つまり、常にデータをウォッチし情報を浴びて「市場の変化」を探す、これを事業経営者ができている上でEC運営者に任せなければいけない。むしろ「守りのEC」こそ、カウンター攻撃を狙う「経営者としての勘と目線」が必要になるのかもしれない。

経営者自身がEC(デジタル)を理解しているか

 「攻めのECの時代から「守り」のECの時代へ。1【no.2130】」にこう書いた。

“事業拡大を前提とした「攻めのEC」が結果として、企業におけるEC事業の定着化を阻んでいる”

 従来のECマーケティングでは「攻めのEC」を止めた途端に、「市場の変化」を見定めるためのデータ活用や情報管理自体もストップしてしまう企業が多かった。ここが「思いっきりやるか、止めるか」。これがEC事業の定着化、そして持続的なEC事業の実現を阻む原因になってきた。

 「買いたい人よりも売りたい人が多い時代」の中でEC市場自体は寡占状態にあり、お客様の琴線に触れなければ、知られない・買ってもらえない時代である。「守りのEC」の体制を整え、「商品企画とタイミング」を社内で熟成させてカウンター攻撃を狙う。これが次のECになるのではないか。もちろん、そのベースにあるのは「守りのEC」の「選択と判断」を実現できる、「人財」が内部にいることになる。もちろん経営者自身を含めだ。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。