ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

EC事業の売上目標を設定する。【no.2133】

 ECの売上目標の設定について、企業により様々な考え方がある。これまでお話をしたEC事業の中には大きく分けて、ふたつの目標設定があった。

大幅アップの目標設定をする

 ひとつは、大幅アップの目標設定をする企業。まず前年対比の2倍、3倍といった予算でEC事業責任者に目標売上をつくってもらう。たとえば、今期のEC年商が1億円であれば、年商2億円。この年商2億円を月次に振り分けていくという方法になる。

 EC事業の特徴のひとつに「急成長」がある。事業拡大のポイントが掴めれば、そのポイントに徹底して2倍、3倍と売上を伸ばすことができる。実際、私がEC運営をしていたときも、月商1,000万円から月商2,000万円に到達するまでの期間はわずか2カ月だった。6月に月商1,000万円に到達し、8月には月商2,000万円に到達した。

 もし仮に、この企業のEC事業がまさに「急成長」をしている状態であれば、前年対比の2倍、3倍といった目標は理解できる。ただ、もしもEC事業の成長がなだらかな右肩上がり、もしくは横ばいであれば、2倍3倍といった目標設定はその根拠をつくるのが難しい。いわば「目標」というよりも、「意気込み」になる。結局、目標達成ができないことを経営陣も現場も暗黙で理解した上の「意気込み」。無理な目標設定はこの状態になりやすい。

 あるとすれば、2倍3倍の目標設定に「別の意味」をもたせるケースになる。現状のEC運営や仕組み、場合によっては商材さえも見直し、まったく新しい考え方でEC事業をおこなって欲しいという意図。これがあるならば、経営陣が現場に2倍3倍の目標設定を課すことも理解できる。これがもしも「商材は一定」であれば、無理難題になってしまう。

着実は成長の目標設定をする

 もうひとつは着実な成長の目標設定をする企業。毎年5%~15%の成長をきちんと積み重ねていこう、という企業。先に書いたとおり、EC事業は「急成長」があるため(あるイメージがある)強気の目標設定をする企業が多かったのだが、最近はEC事業自体がひとつのビジネスとして定着化してきたからか、着実な成長目標を掲げる企業が増えてきたように思える。

 前年対比5%~15%の目標は、EC運営に携わるチームに目標を置き去りにさせない。自分たちの仕事を効率化、最適化したり、広告の費用対効果を見直したり、商品画像や商品ページの修正をおこなえば、着実に目標に近づくことができる。また、商品企画や販促企画が成功することで15%以上の成長を簡単に実現してしまう可能性がありえる。仮に目標に到達しなかった月があったとしても、今後の行動次第で取り戻せる可能性があるのが5%~15%の成長になるのだ。

目標を置き去りにしない、させない

 これが逆に2倍3倍の成長目標を掲げていたとすると、目標に到底到達しないとわかった瞬間に現場は「思考停止」してしまう。発想を切り替えて「まったく新しいアプローチ」をしようにも、あくまで現状の組織や商材・そして予算の枠内に限定されるため、結局ウルトラC的なものはおこせないのだ。まあ、現実的に考えれば、2倍3倍のEC売上をつくるためには2倍3倍の物量が必要になる。じゃあ先に2倍3倍の在庫を用意するかといえば、そこのリスクは取れないのが現実なわけだ。

 5%~15%の目標設定はチームに目標を置き去りにさせないだけではなく、組織の成長も置き去りにしない。ゆるやかで着実な成長の中では、組織も着実に成長させることができる。これが2倍3倍の売上になると組織は崩壊する。新規採用や外注比率が高くなり、情報管理やガバナンスが崩壊する。本来辞める必要のないスタッフがストレスで辞めてしまう。こういったことが起こる。

 2024年もしくは2024年度のEC事業計画を立てている方も多いと思います。ぜひご参考にされてください。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。