ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

顧客獲得コストを理解して「計画的なEC事業の成長」を描く【no.2189】

 顧客獲得コストについて、しっかりと考えたことがある事業者の方は意外に少ないのかもしれません。ECビジネスだけではなく、実店舗のビジネスやBtoBのビジネスにおいてもです。しかし、事業を計画的に成長させていくためには顧客獲得コストの認識は必須です。今回は顧客獲得コストについて紐解いていきます。

*顧客獲得コストについての認識

 顧客獲得コストについて、ECの業界では他の業界よりも比較的浸透している感があります。ECのビジネスでは広告やPRなどの集客・認知拡大戦略を組まなくてはECサイトにお客様が訪れてくれません。EC事業の拡大のためには、否が応でも顧客獲得コストについて考えなければいけない時期がやってきます。

 実店舗のビジネスでは、店舗の存在自体がお客様の集客になりえます。また、店舗にやってくるお客様について「新規かリピーターか」を判断する材料もネットに比べて多くはありません。BtoBのビジネスは新しいお客様を増やすという概念自体がない事業者、つまり長年ほぼ固定のお客様とだけ仕事をしている事業者も多く、その点でも顧客獲得コストという考え方が薄そうです。

 ただし、計画的に事業を成長させていくためには「新しいお客様」を増やすコストを数値化しなければいけません。「このくらいのコストをかければ、このくらいのお客様が増える。だからこのくらいの売上と利益になる」と、計画に落とさなければいけないわけです。そのためには顧客獲得コスト、つまり「新しいアカウント(お客様)を増やすためには、いくらの費用が必要か」の算出が必須になります。

*広告費から算出する

 ECビジネスを展開している場合、わかりやすいのが「広告費」です。かけた広告費に対しての新規購入アカウント数で、顧客獲得コストが算出できます。たとえば、100万円の広告をかけて500件の注文があったとします。その中に新規のアカウントが200件あったとしたら、顧客獲得コストは「広告費/新規アカウント数」で「5,000円/件(アカウント)」ということになります。

 この顧客獲得コストでECのビジネスモデルが成立しているならば、広告費を追加してさらなるアカウント増を目指す。もし成立しない場合は顧客獲得コストを減らすための改善策を検討する、もしくは他の獲得手段を探す。広告にも様々な種類がありますし、お客様に見せるサイト・ページや提案する商品によっても顧客獲得コストは変化します。できるだけ低いコストで、長くお客様でいてくれるアカウントを探すわけです。

 ただ、顧客獲得コストは集客手段の費用だけが分子になるわけではありません。たとえば、新規のお客様のキャンペーンとして「値引き」をするケースがあると思います。定価30,000円の商品を新規のお客様限定で20%OFF。この場合、広告費からの顧客獲得コストに加えて、6,000円(20%OFF)分の「合計11,000円/件」が顧客獲得コストになっているわけです。「キャンペーン×広告集客」の場合、新規獲得コストを広い目線で見ましょう。5,000円/件では獲得効率がよかったとしても、11,000円/件ならば他のアクションも要検討かもしれません。

*計画的なEC事業の成長を描く

 逆に広告集客をおこなっていなく、ECサイトで「ご新規のお客様に限り、定価30,000円の商品を20%OFF」の企画をおこなっているとしたら、新規アカウントあたり6,000円/件の顧客獲得コストがかかっていることになります。この場合、顧客獲得コストが6,000円/件以下になるかどうか、定価で広告集客をかけて判断してみる手があります。もしも広告活用により6,000円/円以下の顧客獲得コストが算出できたならば、先に書いた「計画的なEC事業の成長」を描けるフェーズに入っていることになります。

 あくまで広告費は先出しになるので、広告活用に積極的ではないEC事業者さんがおられるのもわかります。ただ、新規顧客の獲得のアプローチが「ご新規のお客様に限り、定価30,000円の商品を20%OFF」のような形式になっており、「計画的なEC事業の成長」を描くチャンスを逃しているのが現実です。顧客獲得コストをいま一度認識し、適度なアクセルを踏んでEC事業を成長させたいところです。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから