ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

AIを活用したシステム開発はビジネスモデルそのものを変える【no.2213】

 先日、勉強会であるベンチャー経営者の話を聞きました。

 その会社はAIを活用したシステム開発を進めおり、国内外の様々な企業から開発の依頼がきているようです。お話を聞いて印象的だったのが、某大手メーカーから依頼された案件の話でした。

*AIにより工数が下がる「価値」

 その大手メーカーが事前に他のベンダーからもらっていた見積もりより、AIを活用することでシステム開発の納期もコストも大きく下げられるという提案をして、結果その案件を受注することができたというんですね。

 この話を聞いた勉強会に参加していたひとりの方が、「そんなに納期が短くなったのなら、請求はどうするんですか?」って聞いたんですね。というのも、ご存じのとおり従来のシステム開発は人月ベースの請負が多く、開発期間が短くなると、その分売上も下がってしまう構造にあります。すると別の方が、「削減された工数の8割ぐらいを『付加価値』として請求するのはどうだろうか?」という提案をしました。

*システム業界は根本的に変わる

 すると、その経営者は「うちは工数で請求してないんです」と一言。

 どういうことかと言えば、完成したソフトウェアの「利用」に対して、つまりトランザクションベースで課金していると。だから開発期間が短くなるのは、会社にとってもむしろ歓迎。早くシステムをリリースすることができれば、それだけ早く顧客に使ってもらえ、売上も早く立つというわけです。AI活用による開発期間の短縮は、双方にとってメリットがあるわけです。

 この話を聞いて、私がピンときたのは、「こういったビジネスモデルが、今後の主流になるだろうな」ということ。つまり、工数や人月といった「労働量」で勝負をするのではなくて、「成果や活用」に価値を置いたモデルに開発もシフトしていくんじゃないかと感じました。AIが進化する中で、これまでの請負開発のやり方では、戦えなくなる企業も出てきそうです。

 この考え方はEC業界にも当てはまります。

*レベニューの可能性が広がる

 ECのサイト構築には、以前から「成長の可能性がわからない中、初期の開発費用が高い」「構築した後の大きな仕様変更がしづらい」という悩みが尽きません。ECサイトを構築した後に「ここを直したい」と思っても、時間もお金もかかるため、なかなか手をつけられない部分もありました。

 しかしもし、開発会社がAIを使って、リーンに低コストでサイトを立ち上げられるようになったとしたら。そして初期費用を抑えて、売上が立った分だけレベニューシェアで報酬を得るようなモデルが実現できるようになったら。

 開発会社は、AIを活用して数百というECサイトをレベニューシェアで構築し、当たりのプロジェクトから利益を得る、というスタイルも可能になると思います。もちろん売上がゼロで終わってしまうサイト案件も出てくるでしょうが、全体で収益を確保するという発想です。

 また、こういったモデルが成り立てば、「ECサイトを開発して納品して終わり」ではなく、クライアントと一緒に事業を育てていくような関係がより実現できるのではないかと思います。

*自分たちの「価値」は何か見つめる

 このようにシステム開発の業界は、この数年で劇的に変わっていく可能性があります。工数ベースの請負から、成果や活用に価値を置いた継続的なモデルへ。AIの進化がその流れを加速させている。自分たちはこの変化にどう向き合い、どう取り入れていくか。

 そしてこの変化は、業界の規模や立場に関係なくやってくる波だと思います。だからこそ、自社が今どんな価値を提供していて、どういう形で顧客とつながっているのかを見つめ直すタイミングだとも言えるのではないでしょうか。

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ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから