これからの時代に問われる「入り」と「出」の力【no.2217】
最近、ECMJコラムでは「AI活用の本質」についての話題が増えてきました。
*「入り」と「出」という視点
というか、この3カ月ほど、新しく書いたコラムのほとんどがAI活用関連ですよね。それくらい、AIのインパクトはすごい。そして、いまの時代の流れを鑑みれば、ごく自然なことだとも思います。今後、AIはさらに進化し、より多くの人が日常的に使いこなす存在になっていくでしょう。
だからこそ、いま「人間の役割とは何か」を改めて考え直す必要があるように思えるのです。そして、その答えのひとつが、「『入り』と『出』」という視点ではないかと思います。 この「入り」と「出」は、AI時代における人間の価値が問われる重要な領域です。
*「入り」は気づく力、疑問を持つ力
まず「入り」です。これは、世の中のニーズや変化、そしてトレンドをどれだけ早く、正確に捉えられるかという「着眼点」の力のことです。情報があふれ、とてつもないスピードで流れていく時代において、「小さな違和感や変化の兆し」をどれだけ拾うことができるか。それを見つけるためには、日常の様々ところに目を向ける必要があります。
本を読む、映画を見る、旅をする、人と会って話す——ひとつひとつの行動や経験を通じて自己の感性を磨くこと。そして、SNSの情報やテレビCM、インターネット広告など、普段あたり前に触れている景色がいつもと違う雰囲気になっていたら、「なぜだろう」と疑問を持つこと。この「疑問を持つ力」が「入り」の能力を強くしてくれます。
同じ情報を受け取っても、そこから「気づき」を得られる人とそうでない人がいますよね。受け取った情報を表面的な情報のままで終わらせず、「なぜそうなっているのか?」「なぜそうなったのか?」「つまりどういうことなのか?」と掘り下げ、抽象化していくことで、次の具体的な行動や戦略につながっていく。こうした連鎖的な思考力が、今後ますます重要になるはずです。
*「出」は実行力と行動力
そしてもうひとつが「出」。これは「実行力と行動力」です。ITそしてAIといったテクノロジーがどれだけ進化しても、「やる人はやるし、やらない人はやらない」という人間の原理原則は太古の昔から変わりません。
AIは最適化された提案を出してくれます。アイデアもくれますし、具体的なプランだって作ってくれます。しかし、それを実行するかどうか、改善を繰り返して成果につなげられるかどうかは、人間次第です。むしろAIが人間にとって便利なツールになればなるほど、「賢くなった気分」だけを味わい、行動がともなわずに満足してしまう人も出てくるのではないでしょうか。AIの出力をそのまま鵜呑みにして実行し、結果が出ないと「AIが悪い」と諦めてしまう。こうした落とし穴にも、注意が必要だと思います。
*AI時代のマーケティング力の土台
AIの活用が進むことで、「中」の部分、つまり情報整理や提案作成、プラン作成といった領域のハードルはどんどん下がっていくでしょう。だからこそ、「世の中のどこに目をつけて(入り)」「それをどう実行していくか(出)」という前後のフェーズが、これまで以上に人間の価値を左右していくのです。
そして、行動というのは必ずしも一度きりで結果が出るものではないですよね。市場の状況は常に流動的であり、昨日の正解が今日の正解とは限りません。実行して、失敗して、改善して、またやってみる。この繰り返しによって、ようやく成果にたどり着くことができるのが普通です。AIの登場によって「始める」ことのハードルは下がるかもしれませんが、「続ける」ことの難しさは、むしろより本質的な課題になるとも言えそうです。
これからの時代に必要なのは、「入り」と「出」の力を鍛えること。このふたつを意識することが、AI時代におけるマーケティング力、仕事力の土台になっていくのではないでしょうか。
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