矢印を逆にしよう。ECマーケティングにおける「起点」の誤解【no.2219】
Eコマースを始めると、どうしても「ECサイトをつくればお客様が来てくれる」と考えてしまいがちです。これは多くの場合、実店舗の発想をそのまま持ち込んでしまうためにおこります。実店舗であれば、看板を見て入店してくれる人がいますし、通りがかりで立ち寄る人もいます。つまり「存在すること自体」に価値があるのです。
しかし、ネットショップは違います。存在しているだけでは誰の目にも触れられません。誰の目にも触れられなければ、「存在しているけれど、存在していない」のと同じです。
*ECの特性を理解しよう
この「ECの特性」を理解するためにひとつの図をイメージしてみてください。
ひとつ目の図(A図)は、左にECサイト、右にお客様。左のECサイトから矢印が伸びており、右のお客様に届いているイメージです。「店をつくればお客様が来る」という思考はこのA図の延長線上にあります。
もうひとつ(B図)は逆です。左にお客様、右にECサイト。こちらも左のお客様から右のECサイトへ矢印が伸びています。お客様が目的や課題を持ち、それを解決するために「探した」結果、ECサイトが見つかる。このB図こそが、インターネットビジネスの正しい「起点」です。
ECにおいて多くの企業が思うような成果を出せないのは、このAとBの違いに気づかず、Aの発想から抜け出せていないケースが多くあります。
たとえば「バーベキューがしたい」というユーザーがいるとします。その人は肉や炭、トングなどの道具、さらには調理方法の情報をインターネットから探すでしょう。このときユーザーが探した結果、ECサイトやメディアサイトが現れるからこそ、購入や利用につながるのです。もしお客様が探されなければ、そのサイトは存在していないのと同じです。
つまり、ECのマーケティングを考えるうえで大切なのは「常にお客様が起点にある」という視点です。この矢印を間違えると、どれだけ商品を並べても、どれだけ見栄えを整えても、お客様には届きません。
*マーケティングの「認識」を変えるためには
さて、このBの視点をどうすれば組織や日常の運営に浸透させられるでしょうか。
まず第一歩は「自分たちのサイトは知られていない可能性がある」ことを認識する必要があります。そのためにはデータの確認が欠かせません。アクセス解析を見れば、そもそもの訪問があるかどうか、訪問があっても購入されていないのかが分かります。
重要なのは「訪問があるのに買われない」のと「訪問がそもそもない」のは、まったく違う課題だという点です。前者なら商品やサイトの見せ方に課題があるかもしれませんし、後者ならそもそも認知の問題です。
この切り分けをせずに「なぜ売れないのだろう」と考えても答えは出ません。まずは認知されているのかどうかを見極める。もし認知されていれば、その要因を整理して強化する。認知されていないなら、どうやって見つけてもらうのかを戦略的に設計する。ここから次の施策につながっていきます。
*お客様になぜ探されるのか、を考える
また、その際には「需要と供給」の関係も考慮が必要です。市場の需要が大きくても、供給側に圧倒的な強者がいる場合、自社が埋もれてしまうことがあります。だからこそ差別性をつくり、ターゲットを絞り、その人たちに見つけてもらえる仕掛けをつくることが欠かせません。
その方法はコンテンツを積み上げるのでも、専門性のあるSNSを運用するのでも、ターゲット層が集まるコミュニティに直接アプローチするのでも構いません。重要なのは「お客様が探すときに、自分たちが見つかる状態をつくる」ことです。
ECの成功を分ける最初のポイントは、この矢印の向きを正しく理解できるかどうかにあります。Aの思考からBの思考へ。存在することに価値があるのではなく、お客様に見つけられることに価値がある。この考え方を組織に浸透させることが、すべての出発点になります。
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