「逆算マーケティング」理想の顧客像から考える新規獲得【no.2229】
ECサイトの集客を考えるとき、多くの事業者がまず「アクセスを増やす」ことを思い浮かべます。当然です。広告を出したり、検索対策をしたりして、より多くの人にサイトに訪れてもらい、その中から購入してくれる人が現れる。そして購入者の一部がリピートしてくれることで売上が積み上がっていく、これが一般的なシナリオです。
*本来は「欲しい人」だけを集めればいい
しかし、この発想は前提として「新規アクセスの多くは購買意欲がさほど高くない」という事実を抱えています。たとえば広告を出せば確かにアクセスは増えますが、そのほとんどは冷やかしで終わるか、単発の購入にとどまってしまいます。だからこそ、「アクセス→購入→リピート」という流れを「いかに引き上げていくか」が語られるわけです。
本来の理想を言えば「最初から自社の商品が欲しい人」「最初から自社の商品に興味がある人」だけを集めればいいはずです。そういった人であれば、アクセスしたら購入する、購入したらリピートする、そのすべてのステップが100%に近づきます。現実にはほぼ不可能なことですが、この理想を意識するかどうかで「マーケティングの精度」が大きく変わります。
*新規顧客を「質」の視点で見る
この考え方こそ、「逆算マーケティング」です。逆算マーケティングとは、既存の継続顧客を出発点にして、彼らの購買動機や行動特性をさかのぼり、同じような新規顧客を集めるための施策を設計することです。
ポイントは「理想顧客はすでに目の前にいる」という発想です。リピートしてくれているお客様はなぜ自社を選んでくれたのか。最初に買った商品は何か。そのとき他に何を検討していたのか。どうやって自社サイトを見つけたのか。購入後にどんな体験をしてリピートにつながったのか。これらを逆算的に掘り下げることで、新規顧客を「数」ではなく「質」で見られるようになります。
実務での進め方は大きくふたつあります。ひとつはデータ分析です。購買データをもとに、購入頻度や購入金額、流入経路を分析し、ロイヤル顧客の共通点を探る。もうひとつは顧客接点からの聞き取りです。インタビューやアンケートを通じて「なぜ選んだのか」「どんな場面で使ったのか」を聞く。さらに接客やイベントからお客様を直接観察することで、言葉に出ない特徴も拾うことができます。
*外部パートナーに共有し、同じ方向を向く
そして、理想顧客像が定義できたら、広告代理店やマーケティングパートナーに共有することが重要です。広告はどうしても「幅広く集めてから引き上げる」発想になりがちですが、理想顧客を解像度を高めて伝えることで、広告のターゲティング精度が格段に上がります。結果として1件あたりの獲得コストは上がったとしても、長期的に見ればLTV(顧客生涯価値)で十分に回収でき、ROI(投資利益率)は改善します。
新規顧客獲得のための広告費が今後も高騰し続けるのは間違いありません。単に「アクセスをとにかく増やす」という考え方では費用対効果が合わなくなっていきます。今後求められるのは、「既存顧客から逆算し、理想顧客に絞り込んで獲得する」精度の高いマーケティングです。
アクセスの増減に一喜一憂するのではなく、自社にとっての理想顧客を定義し、その人たちがどうやって出会い、どうやってファンになっていったのかを解き明かす。「逆算のマーケティング」の視点を持つことが、これからのデジタル時代のマーケティングにおいて欠かせない思考法なのです。
カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 5.Eコマースの分析
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