「良いことをすれば未来は良くなる」という前提を忘れないこと【no.2230】
Eコマースの最大の特徴は「データを活用できる」という点です。
日々の売上データだけでなく、注文件数やセッション数、商品ページごとの閲覧数といった情報まで、中小企業や個人規模でも手に入れられる。そしてこれを次の施策に活かせることが、デジタルのマーケティングの大きな強みです。ECMJでもコンサルティングの現場で、まずは「出てきたデータをもとに改善していきましょう」と伝えることが多くあります。
*データで測れない仕事を軽視しない
しかし、ここで注意が必要なのは「データに寄りかかりすぎると行動ができなくなる」ということです。特に気をつけたいのは、データに表れやすい施策にばかり偏ってしまうことです。
たとえばメルマガを配信すると、当日・翌日には開封率やクリック率といった結果が出ます。こうした短期的に効果が数字に出る施策は、データ検証がしやすいわけです。だからこそ「やった感」があり、安心して続けやすいのです。反対に、毎日のお客様への対応や、地道な情報発信のような中長期的な取り組みは、すぐにデータで成果を測ることが簡単ではありません。中長期的でデータを見ても複数の要因が絡み合っていることが多く、数字だけで判断できないことが多いのです。
結果として、「データが見えないからやらない」「数字に出ないから意味がない」という理由で、未来につながるはずの施策が排除されてしまう。これでは本末転倒です。結局、短期的なセールや広告など、すぐ数字に現れるものだけが残り、中長期的に積み重ねるべき施策が軽視されてしまうのです。
*データがすべてではない、を根本にもつ
さらに言えば、短期的に見えるデータですら、実は完璧に信じられないケースもあります。たとえばメルマガを比較するとき、配信するタイミングが異なれば、季節やトレンドの影響で結果が変わってしまいます。あるいはABテストを行っても、比較対象となるユーザーの属性が微妙に違えば、成果の出方も変わります。短期データですら条件次第で揺らぐわけですから、「データさえ見れば正解がわかる」というのはある意味幻想に近いものです。
もちろん、データは非常に重要です。何を改善すべきかのヒントを与えてくれますし、取り組みの方向性を示すコンパスにもなります。ただ、忘れてはいけないのは「データですべてを説明することはできない」という事実です。データに表れないけれど、確かに未来を良くするはずの行動は存在します。
だからこそ大切なのは、「良いことをすれば、未来は必ず良くなるはずだ」という感覚を根本では持ち続けることです。これは決して根拠のない精神論ではありません。データが存在しない時代には、人々はそう信じて改善や工夫を重ねてきたわけです。
*良くしようと思えば、良くなる
現代はデータが豊富にあるがゆえに、逆に「データで証明できないものはやりたくない」と思考停止に陥る危険があります。そこで必要なのは「データがなくてもやるべきことをやる」という覚悟です。お客様対応ひとつにしても、情報発信ひとつにしても、お客様にとって良いことだと思えるなら迷わずやる。未来の成果はすぐに数字には現れなくても、必ず蓄積され、ある時点で大きな違いになります。
データ活用はあくまで補助輪のような存在です。行動の価値を保証するものではなく、行動をより良い方向へ導くための参考資料。それ以上でも以下でもありません。根本にあるべきは「良くしようと思って改善する」「お客様を喜ばせようと工夫する」という意識です。その意識がある限り、中長期的には必ず良い方向に進む。その信念を持って行動し、そこにデータを組み合わせることで初めて健全なマーケティングが成立します。
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