ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

数字に表れない声を拾おう!情報管理と定性情報の力【no.2231】

 ECのマーケティングといえば「データ活用」という言葉がよく出てきます。

 売上やセッション数、コンバージョン率といった数値を管理し、その変化を見て次の改善策を考える。確かにこの数値管理はECの強みであり、ビジネスを前に進めるための羅針盤になります。

*「なぜ」を探すための情報を追う

 しかし、それと並列して見逃してはいけないのが「定性情報」です。お客様の声、レビュー、問い合わせといった数字に表れない情報をどう管理し、活かしていくか。これを怠ると、データだけを追いかけて「なぜ数字が動いたのか」がわからなくなる危険性があります。

 ネットショップから得られる定性情報として代表的なのは、お客様からの問い合わせです。メールや電話で「この商品はこう使えますか?」「別のサイズはありますか?」といった声が届きます。こうした問い合わせは、一見すると個別対応に思えますが、実は「潜在的に同じ疑問を抱えている顧客が多数いる」ことを示すシグナルです。

 次に購買行動のデータです。このデータは定量の側面もありますが、「どの商品とどの商品が一緒に買われているか」「ある商品が突然大量に売れた」などが起こる背景には必ず理由があります。その理由を仮説立てし、そして可能であれば顧客に直接聞くことで、データの背後にあるストーリーを拾い出すことができます。

 さらに重要なのがレビューです。レビューはお客様が唯一「自発的に文章で残してくれる定性情報」です。匿名性の高いBtoCのECでは、どうしてもネガティブな意見が目立ちやすい傾向があります。だからこそ、ポジティブなレビューが多い場合は「期待を超えて満足している顧客がいる」証拠として高く評価すべきです。

*リアルから得られる情報もたくさんある

 ここまではECサイトから直接得られる情報ですが、見逃してはいけないのがリアルの接点から得られる情報です。たとえばBtoBを手がけている会社であれば、営業担当者が取引先から聞き出した声。「最近こういう要望が増えている」「こんな機能が求められている」といった生の情報は、ネットだけを見ていても気づくことができません。

 また、実店舗を持っている場合は、店頭でお客様から直接声を聞きましょう。「インスタで見た商品はありますか?」「YouTubeで紹介されていたのを探して来ました」といった具体的な発言は、EC担当者だけでは到底拾えない情報です。今は人によって接触しているメディアがバラバラで、過去のように全員が同じ媒体を見ている時代ではありません。だからこそ、営業や店舗スタッフが拾った「どこで知ったか」という情報は、次の施策のタネになります。

 実際、「YouTuberが紹介していたから欲しくなった」「インスタグラマーが着ていたから買いたい」という理由で商品を探し、購入する顧客は少なくありません。このような声を拾うことができれば、そのインフルエンサーとのコラボや広告出稿など、次のマーケティングにつなげることができます。

*大切なのは「仕組み」をつくること

 ポイントは、こうした情報収集をEC担当者だけに任せないことです。ネットで得られる情報はEC部門が中心に集めるとしても、リアルから得られる情報は営業や店舗スタッフの協力が不可欠です。そして、逆にネットから得た情報をリアル部門に渡して活用する場面もありえます。双方向に情報を共有できる体制が整えば、マーケティング全体の精度は格段に高まります。

 できれば「情報管理プロジェクトチーム」を社内に設け、部署横断で情報を集約することが理想です。問い合わせやレビューはECから、要望や会話はリアルから、それぞれ拾った情報を一元的に集め、会議で検討する。この仕組みがあれば、データに現れる前に世の中の変化を察知し、素早く打ち手を考えることができます。

 ECの強みはデータにありますが、それだけでは不十分です。数字の裏にある情報を拾い続けること。これが、変化の激しい時代において、選ばれ続けるショップの必須条件です。

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    ishida

    石田 麻琴 / コンサルタント

    株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから