コンバージョン率は高ければいいわけではない【no.2243】
コンバージョン率(CVR・転換率)という言葉は、ECの現場で最もよく使われる指標のひとつです。
これは、受注件数をセッション数で割った数値、つまり「来店したお客様のうち、何%が購入したか」を示しています。ネットショップの売上公式(セッション数×コンバージョン率×客単価)の中でも特に注目されやすく、「どうすればコンバージョン率を上げられるのか?」というテーマは、書籍やセミナーでも必ず取り上げられています。
*CVRは「商品そのもの」で変化する
しかし、このコンバージョン率というデータ項目は、多くの人が思っているよりも簡単なものではありません。コンバージョン率はUI/UXの改善、商品ページの作り込みなどによって改善できるように考えられていますが、実際はもっと根本的な要素によって左右されています。結論からいえば、コンバージョン率を最も動かすのは「商品そのもの」なのです。
もちろん、ページの見やすさや購入導線の分かりやすさも大切です。しかし、それ以上に「誰に」「どのタイミングで」「どんな商品を」届けるかがコンバージョン率には決定的に重要なのです。適切なお客様層に、適切なタイミングで、適切な商品を伝える。これができなければ、いくらUIやデザインを工夫しても、本質的な改善にはつながらないわけです。
*CVRが下がるのは成長の証拠
もうひとつ理解しておくべきなのは、「コンバージョン率は高ければいい」というものではないということです。ECサイトをスタートした初期段階では、自社を知っているお客様しかアクセスしないため、自然とコンバージョン率は高く出やすいものです。しかし、サイトが成長して一見客が増えてくると、受注件数も伸びますが、それ以上にセッション数が伸びるため、コンバージョン率は下がりやすくなります。つまり、コンバージョン率が下がるのは「悪い兆候」ではなく、「サイトが成長している兆候」である場合が多いのです。
この点を誤解していると、コンバージョン率の変化(低下)に一喜一憂してしまい、誤った意思決定につながります。コンバージョン率を扱う難しさは、まさにここにあります。単純に「上げればいい」「高ければいい」というものではなく、成長ステージや集客状況と切り離すことができないのです。
*CVRは商品ページ単位でみること
では、コンバージョン率を正しく見るためにはどうすればいいでしょうか。回答のひとつは「店舗全体の平均値ではなく、ページ単位で見る」ことです。ネットショップの場合、ひとつひとつの商品ページごとにコンバージョン率は異なります。ある商品ページは改善を加えることでCVRが上がるかもしれないし、別の商品ページは競合との比較によりCVRが改善しないかもしれない。全体平均の数字ではなく商品ページ別に数字を追うことで、改善策の効果を検証することができるのです。
ECMJでは、商品ページ単位のコンバージョン率を観察し、改善を加え、それによるコンバージョン率の変化を蓄積することを重視しています。これにより商品ページに「どの施策が有効だったか」を自社のノウハウとしてストックすることができます。逆に全体のコンバージョン率だけを見ていても、結局数字に何が効いたのかがわからず、次の改善につながりづらいのです。
コンバージョン率は、ECを象徴するような数字です。その一方で「誤解されやすい数字」でもあります。高ければいいと思い込み、UI改善だけに走るのは危険です。成長のステージによって自然に変動すること、商品や対象顧客・タイミングによって大きく左右されること、そしてページ単位で見て初めて意味が出ること。これらを理解したうえで取り扱う必要があるのです。
カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 5.Eコマースの分析
メルマガ登録 Mail Magazine
ECMJでは不定期のメールマガジンを配信しています。メルマガにご登録いただくと、最新ECトレンドや売上改善事例、マーケティングチームの内製化ノウハウ、登録者様限定のホワイトペーパーなどの情報を最速でお届けします。今すぐ活かせる&本質的なマーケティングの情報です。