SNSはメルマガの代わりではない。「顧客の渦」を生み出す場【no.2247】
SNSの活用は、いまやECのマーケティングにおいても欠かせない存在になっています。
2009年から2010年頃にTwitter(現X)が登場し、スマートフォンの普及とともに個人が情報を世界に発信できるようになりました。Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなども加わり、誰もが「個人メディア」を持てる時代が訪れたのです。
*SNS活用の本質は「双方向性」
しかし、多くの企業は今もなおSNSの使い方を誤解しているようです。人は新しいツールが登場すると、既存のツールの置き換えとして考えてしまいます。SNSの場合、その置き換えの代表が「メルマガの代わり」としての発想です。企業アカウントを作り、フォロワーに向けて一方的に新商品や販促情報を流す。フォロワーはそれを受け取って購入行動を起こす。こう考えている会社は少なくありません。
これはSNS活用としては50点でしかありません。SNS活用の本質は「双方向性」です。SNSの情報は、発信を受け取ったフォロワーが「いいね」「コメント」「シェア」「リポスト」などの反応をしたときに初めて拡散していくのです。発信者と受信者が相互にやり取りをし、そのやり取りをフォロワーのフォロワーが見て、情報が波紋のように拡散していく。これがSNSの強みです。メルマガの置き換えではないのです。
*「顧客の渦」を拡げていこう
そして、SNSの活用においてさらに重要なのは「顧客同士のつながり」です。従来のマーケティングでは、ブランドと顧客が一本の線で結ばれる関係でした。しかし現代はSNSの登場によって顧客同士が直接つながり、情報をやり取りし、ブランドのフォロワー界隈やコミュニティが形成されます。この「顧客同士のつながり」こそが、SNSのマーケティング効果を最大化するエンジンになります。
たとえば、あるブランドのファンがブランドのリアルイベントで出会い、そこでSNSアカウントを交換、SNS上で交流を始めます。すでにリアルでの関係があるからこそ、SNS上でも活発にやり取りをします。そして、そのやり取りを見た他のフォロワーが「自分もこの界隈に入りたい」と思い、次のイベントに参加します。イベントでまた新しい人同士が繋がり、またSNSに持ち帰って交流します。こうしたリアルとSNSの往復が繰り返されることで、「顧客の渦」が広がっていくのです。
この構造はSNSプラットフォームのビジネスモデルとも一致しています。XやInstagramなどすべてのSNSは、ユーザーがSNSを見る時間を増やすことが収益の源泉になっています。そのため「ユーザーの反応が多いアカウント」「ユーザー同士が盛んにやり取りしている発信」がタイムラインに優先的に表示されるのです。SNSは先に書いたとおり、「双方向性で広がる情報」を前提に設計されているのですから。
*企業のSNS運用で注意するポイント
では、企業がSNSを活用するうえで何を意識すべきかです。まず第一に、SNSでの発信内容は「反応したくなる」ものであることです。情報を一方的に伝えるだけでは拡散は起きません。「共感できる」「ついシェアしたい」「コメントしたくなる」ような要素が必要なのです。
次に、SNS担当者の選び方です。双方向性を意識した発信は、頭で学んだからといって簡単にできるものではありません。プライベートでSNSを使い倒している人にしか感覚的には身についていません。だからこそ企業アカウントの担当は「普段からSNSをやり込んでいる人」を任命すべきです。逆に、アカウントを持っていても普段触っていないような人に任せるのは、失敗につながるパターンです。
そして最後に、SNS活用の目的はフォロワー数やバズではなく「ブランドと顧客、そして顧客同士の界隈づくり」であるということです。企業と顧客の一方向の関係を広げるのではなく、企業と顧客、顧客同士が繋がり、関係性を育てること。その状態を作り出すことができれば、SNSは単なる販促ツールではなく、強力なブランド形成の場になります。
SNS活用の本質は「双方向性」と「顧客同士の渦」にあります。アクセス数やフォロワー数だけを追いかけるのではなく、いかに顧客が自発的に交流したくなる場をつくれるか。その視点に立って、SNSの持つ力をマーケティングに生かしていきましょう。
カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 3.Eコマースの収益アップ
メルマガ登録 Mail Magazine
ECMJでは不定期のメールマガジンを配信しています。メルマガにご登録いただくと、最新ECトレンドや売上改善事例、マーケティングチームの内製化ノウハウ、登録者様限定のホワイトペーパーなどの情報を最速でお届けします。今すぐ活かせる&本質的なマーケティングの情報です。