「トイレはきれいでしたか?」に学ぶマーケティング思考【no.2271】
公衆のトイレにある「トイレはきれいでしたか?」という液晶画面を見たことはあるでしょうか。トイレを利用した後に「きれい」「ふつう」「きたない」「故障」という4つのボタンから1つを選んで押す仕組みです。
先日、私自身は羽田空港で見かけてボタンを押しました。最初は「なぜこんなものが設置されているのだろう」と思いましたが、少し考えてみるとこれは非常に秀逸な仕組みなのではないかと思いました。今回はこの「トイレはきれいでしたか?」という仕組みを、マーケティングやデータ活用の視点から考えてみます。
*トイレ利用と清掃の「評価」としての効果
まずこの仕組みの効果として、シンプルに思い浮かぶのは「評価」ではないでしょうか。トイレの利用者が「きれい」「ふつう」「きたない」「故障」というボタンを押すことで、トイレの利用満足度を測ることができます。トイレを利用した人が「気持ちよく使えたか」を、その場で評価として残してもらうわけです。
また、この評価は清掃スタッフの皆さんの清掃レベルを客観的に測る仕組みにもなります。マネージャーがいちいちトイレの状態を目視でチェックしなくても、利用者側が清掃の状態を評価してくれるのです。非常にシンプルで効率的な仕組みです。
だだ、この仕組みにはもうひとつ重要な使い方があるのではないかと思います。今回のコラムのポイントはここです。前述した「評価」は、いわば「点」としての仕組みの活用です。しかし、この「トイレはきれいでしたか?」は「線」としても活用しているのではないかと感じました。
*清掃のタイミングの判断材料になる
清掃スタッフの皆さんによってトイレが清掃された直後、トイレは「きれい」な状態からスタートします。したがって、このタイミングでは「きれい」のボタンが多く押されるはずです。しかし利用者が増えるにつれて、徐々に「ふつう」が増え、場合によっては「きたない」が押されるようになっていきます。トイレは使われるたびに少しずつ汚れていくからです。
つまり、時系列でのトイレの評価の変化を見ることで、トイレの「清掃のタイミング」を判断することができます。「きれい」から「ふつう」が増えているタイミング、あるいは「きたない」が押され始めるタイミングが、次の清掃の目安になるのではないでしょうか。
さらに「きたない」や「故障」という評価が突然増えた場合、それはトイレで突発的なトラブルが起こったことのサインになります。それまで問題がなかったトイレで、急に「きたない」「故障」の評価が増えたとすれば、何かが起きた可能性があるからです。そうなると、清掃スタッフの皆さんがすぐに対応する必要があります。
*「変化」を見ればアクションにつながる
おそらく空港のような場所では、こうしたデータをリアルタイムで把握できる仕組みになっているのではないでしょうか。敷地が非常に広く、多くのトイレが存在する空港のような場所。そこで清掃スタッフの皆さんがひとつひとつトイレを巡回し、その状態を確認するのは効率的ではありません。しかしこの仕組みがあることで、「どのトイレを優先して清掃すべきか」を事前に目星を付けることができるのです。
きれいな状態が保たれているトイレには清掃にいく必要がありません。評価が悪化しているトイレを優先的に清掃すればよいのです。そして、もし評価がほとんど入力されないトイレがあるとすれば、それは利用者自体が少ないトイレである可能性もあります。それがわかれば清掃の優先順位は低くなりますし、場合によってはトイレ自体の存在の必要性を検討する材料になります。
「トイレはきれいでしたか?」という、単なる評価装置のように見える仕組みでも、データを「線」として捉えることで、実は清掃の運用を大きく効率化することができる。データを「点」として見るだけではなく、「線」として捉えるという思考が身につくと、データ分析が具体的な行動に落としやすくなるというマーケティングの好例でした。
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