ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

情報連携こそ、ECを全社事業に変える回路【no.2274】

 EC事業に取り組むとき、多くの企業が見落としがちなのが「情報連携」の重要性です。

 ECビジネスというと、ネット上でお客様を集客して、商品ページを通じて商品を販売し、配送までを完結させる、そんな「ネット完結型」のイメージを持たれることが多いかと思います。しかし、実際の現場ではネットとリアルが密接に絡み合っています。情報を一方通行で流すのではなく、ネットとリアルの双方向に循環させる仕組みを作ることが、ECを含む事業全体を成長させる鍵になります。

*ネットからリアルの情報連携

 ある食品メーカーの事例です。ネットショップでまとめ買いの注文が入りました。調べてみると、購入者はパチンコ店。単なる一件の売上として片づけることもできますが、ここに重要な示唆があります。パチンコ店がECで商品を購入することから想像されるニーズは「景品需要」です。この情報を営業部門と共有することができれば、リアル営業の担当者が「パチンコ店の景品に合わせた商品のパッケージジング」を提案することが可能になります。

 こういったネットショップのデータをリアル営業に渡せば、新たな顧客開拓や商品展開につながる可能性があるのです。ECを単なる「売上チャネル」と見なすのではなく、新しい「顧客のニーズを発見する窓口」と位置づけることが重要ではないでしょうか。

*リアルからネットの情報連携

 ネットからリアルの話をしましたが、リアルからネットの逆パターンもあります。実店舗ではお客様が「YouTubeで見たんですけど、この商品はありますか?」などと尋ねてくることがあります。ネットの場合、顧客は自らの検索力を駆使して商品を探しますが、わざわざネットショップに問い合わせることはあまりありません。だからこそ、リアル店舗で聞くことができる「生の声」は非常に貴重です。

 たとえば「人気YouTuberが使っていた包丁が欲しい」という声を実店舗でキャッチしたら、その商品を「〇〇さん愛用の包丁」としてネットショップで紹介したり、動画で使われている関連商品を特集ページにまとめたりすることができます。顧客が実際に口にする生の情報は、ECの運営側が追いきれない多様なメディア環境を補う強力なヒントになります。

*まずは情報を「残す」習慣づくりから

 こうしたネットとリアルの情報を双方向に行き来させるには、組織的な仕組みが必要です。情報は気にしなければ流れていってしまうものです。現場で「これは使える情報ではない」と判断され、そもそも記録に残されないことも少なくありません。結果として、せっかくの顧客ニーズが活用されないまま消えてしまいます。

 大切なのは、「使えるか使えないか」の判断は後回しにして、まず記録することです。どんな些細な情報でもメモを取り、社内チャットや共有ツールにアップする。それが難しいならば、定期的な共有タイムを設けて「こんな声があった」とシェアする場をつくる。これだけで情報が残り、再利用できる可能性が広がります。

 ECとリアルの間で情報を循環させる仕組みを持つ企業は、顧客理解の深さがまったく違います。ネットからは「データとしてのニーズ」、リアルからは「生の声」が得られる。その両方を往復させることで、部門を横断した新しい提案や商品企画が可能になるのです。

 情報連携は単なる効率化ではなく、マーケティング文化そのものを形づくるものです。現場の声を仕組みに変える回路を社内に作ること。それがECを「販売チャネル」という単独の試みから、会社全体の成長エンジンへと進化させる第一歩になるのです。

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    ishida

    石田 麻琴 / コンサルタント

    株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから