ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

オープン当初から多額の広告費をかけると、EC事業は「失敗」します。【no.1177】

 オープン当初から多額の広告費をかけると、EC事業は「失敗」します。

 EC事業に参入することになった。そのためにオンラインショップを構築した。社内の人材をアサインして、担当者をつけることにした。オンラインショップ専用の商品在庫を準備した。実店舗に比べてECへの参入は初期投資が少ないものの、それなりにお金はかかります。

*広告費の投下はビジネスの早道ではある

 オンラインショップの開発、構築をどれくらいの費用でおこなうか。それにもよりますが、中小企業なら100万円~1,000万円ほどの初期投資がかかります。できるだけオープン初月から利益を確保したい、できれば初月から黒字だと嬉しい。そして会社としてもそのくらいの気持ちでEC事業に取り組みたい。気持ちはわかります。

 リアル、ネットの広告に関わらず、広告費を投下することはEC事業の成長の早道です。これから着実に積み重なっていくお客様の認知を、時間を巻いて得る方法です。また、広告費を使わずにどうやってお客様にその存在を認知してもらえばいいのか。そのアイデアがないためオープン当初から広告費を投下するケースもあるでしょう。

 どちらかというと、リアルのビジネスを展開してきた会社がECに取り組むと、この「いきなり広告ドッカン」をやってしまうケースが多いです。しかし危険です。なぜならリアルとネットはそもそものマーケティングの考え方が異なるのです。

*70%でスタートして100%に改善する

 オンラインショップは70%でスタートします。そして改善を繰り返していきながら100%に近づけていくのがセオリーです。つまりオープン当初「100%の出来」の自己評価でも、お客様からの評価はわかりません。日々オンラインショップを運用改善し、成果のデータを検証する。その過程を踏んで「お客様からの評価」をもらえるように変化させていくのです。

 実際にはオープン当初のオンラインショップは30点や40点です。はじめてECに挑戦している会社さんは、10点や20点でのスタートということになります。もちろん、「自分たちの認識」としては「売れるだろう」と思ってスタートします。とは思いますが、市場認識は異なるのです。

 10点や20点のオンラインショップに多額の広告費を使ってお客様を呼び入れたとします。まず、売上になりません。仮に売上につながったとしても、一回きりのお客様です。オンラインショップを定期的に利用してくれるリピーターのお客様にはなりません。なぜなら、オンラインショップの運営についてもはじめは20点や30点なわけですから。

*「成長ポイント」まで広告費はおさえる

 多額の広告費をかけるタイミングはもっと後です。お客様がどんな商品、提案、販促を楽しんでくれるのかを知って広告費をかけるのです。広告費がどれくらいの売上と利益につながるかを想定して、広告を打てるはずです。オンラインショップの「成長ポイント」が見つかるまで、広告費はおさえてください。

 「そもそもお客様に知られないことには、成長ポイントもわからない」。そのとおりです。その場合は10万円、20万円という少額の広告をかけましょう。これはあくまで売上目的ではなく、マーケティングの目的です。「成長ポイント」を探るための仕掛けだと考えてください。オープン当初から多額の広告をかけても良いパターンもないわけではありません。それは「すでにリアルでのブランド認知がある会社」のEC事業だけです。

 オープン当初から多額の広告費をかけると、EC事業は必ず「失敗」します。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。