著者:石田 麻琴

人海戦術のリスクは、事業の成長が止まったときに露見する【no.0385】

 ネットショップの急激な成長と人海戦術の危険性について。(前回はこちら

 前回のコラムで、Eコマース事業は「成長のポイント」を掴むと急激に成長していくことについてお話ししました。実店舗のビジネスは前年比3%や5%の成長を堅実に積み重ねていくことが重要ですが、インターネットのビジネスは200%や300%の成長が当たり前に起こります。実際私はネットショップの運営者時代に、前年対比7,000%の成長を経験していますし、弊社のクライアントにも昨年対比200%成長、300%成長という事業者さんがおられます。

事業の成長に組織の成長が追いつかないから人海戦術に

 売上が伸びるのは嬉しいのですが、このような状態のときに起こる問題があります。事業の成長に対して、組織の成長が追いつかないのです。お客様の客単価が倍になることで売上が倍になれば良いのですが、倍になるのは「物量」の方です。お客様からの注文数が倍になり、受注メールが倍になり、発送数が倍になり、管理する在庫数が倍になり、お客様からの問い合わせ数が倍になります。組織が未成長ならば、現場が混乱しお客様からのクレームが3倍、4倍になることもあります。組織の未成長をカバーするとき、「人海戦術」という選択肢を選ばざるをえないケースも多くあります。目先の課題をカバーしなくてはいけないのですから当然です。

 人海戦術のリスクは、事業が成長している段階では気づきません。事業の成長が止まったときに初めて気づきます。いままで売れていた商品が売れなくなる。広告の費用対効果が悪くなる。市場に同様の商品が出回り、価格競争が始まる。インターネットのビジネスは、売上が2倍、3倍になる可能性もあれば、2分の1、3分の1になる可能性もあります。しかも、それが2倍、3倍の成長と同じスピードで減退していくのが恐ろしいところです。成長に合わせて人海戦術を行うと、市場環境が変化したときにアッという間に固定費率(人件費率)が超過してしまいます。

パッチワーク式に採用した「人海戦術的」人材は成長が止まると危ない

 市場のリスクとともに、組織のリスクも注意しておかなければいけません。事業の成長に合わせての「人海戦術」での採用はどうしても「人材」になってしまいます。組織の成長上、本質的には必要のないメンバーでも、「物流がパンクしているから」「在庫管理が混乱しているから」「とりあえずクレーム電話を受けてくれる人を」というように、パッチワーク式に採用した人材です。理想とする事業の成長があり、理想とする組織があり、そこから逆算して集められたメンバーではありません。その人材が事業の成長が止まったときの足枷になってしまいます。

 Eコマース事業を継続して成長させていくためには、「制作だけ」「物流だけ」「カスタマーサポートだけ」といった、専門職のスタッフの集まりは厳しくなります。Eコマース事業の「商品企画・商材開拓」から「カスタマーサポート」まで、頭からお尻までの業務を知り、そして「データをとって、毎日カイゼン」の思考をもつ人財こそ、筋肉質の組織を実現することができるのです。これらを叶えることは難しくまた時間が必要ですが、最低でもフロントヤードの仕事とバックヤードの仕事のどちらかは完全に担当できるようにしたいところです。

ディフェンダー「しか」できない人材はいずれ必要なくなる

 フォワードができて、ミッドフィルダーもできる。ミッドフィルダーができて、ディフェンダーもできる人財です。一時的に、ディフェンダーができる人材が必要でも、ディフェンダーだけしかできない人材はいずれ必要がなくなります。人海戦術では、目先の「ディフェンダーさえやってくればいい」スタッフを採用しがちですが、市場環境の変化や組織の長期的な成長から逆算して冷静に選定をすることが重要です。もし、「長期的には必要なくなるが、いまは手が足りないのですぐに必要」という場合は、素直にアウトソーシングを頼るのが良いと思います。何でも自社で担当を抱えると、後が大変です。