著者:石田 麻琴

引越し業者ってめちゃくちゃスゲー、営業の裏をみた話。その四【no.0505】

(前回はこちら

「ひとめぼれ1キロプレゼント」を提案した理由

 引越し見積の「先手必勝」っぷりをA社の営業さんから聞いて思い浮かんだのが、S社のオペレーターのお姉さんが言っていた「ひとめぼれ1キロプレゼント」でした。引越し業界では至極当然のことのようですが、もし先手を打てなかったとしても見積だけはしてもらえるように(つまり交渉の機会を得られるように)、「お米のプレゼント」を提案したんですね。私自身、電話をしたときは、さほど気にしなかったですが。

 それを知ってしまうと、より中の仕組みを想像してしまうのが職業病です。S社がプレゼントするお米(もしくはその他のアイテム)として、見積り依頼の電話をした当日から見積アポイント日までの時間が空けば空くほど、お客様に提案するプレゼントも豪華になっていくのかな、などと考えてしまいました。

 自分だったら、「当日の見積はプレゼント無し」「翌日の見積はお米500g」「翌々日ならお米1キロ」「3日後になるとかなり望みが薄いから、お米2キロにしちゃおう!」というようなリストを作成し、オペレーターの女性に渡しておくかなと。その工夫が結果に繋がっているかは、当然「データをとって、毎日カイゼン」になるのでしょうが。

お客様にとって「何が反応されるか」マーケティングする

 S社のお米のプレゼントの他に、「ひとめぼれ1キロ、700円相当をプレゼントします」と「700円相当」というところをわざわざ強調していたことも、なんだか理由が見えてきました。お客様は、相見積もりを取る際に、「どの引越し業者に依頼すると最も得か」頭をグルグル回転させて考えるはずです。今回、私が見積のアポイントを依頼したのはA社とS社の2社(結果としてS社と会うことはありませんでしたが)でしたが、4社5社と相見積もりを取る方もいるでしょう。

 お客様(=引越し依頼主)としては、納得がいく見積が欲しい。相見積もりによって「自分が得をした感」を感じたい。見積としても、ギリギリのラインでの選択になったときに、この「700円相当なんですよー」というのが、頭をかすめるのではないでしょうか。「そうか、お米をもらった分、700円得をしているぞ」と。

 しかしその裏側を考えると、「ひとめぼれ1キロ、700円相当」はあくまで小売店(スーパーやコンビニ)に並ぶ小売価格であって、S社が卸から「ひとめぼれ」をまとめて仕入れるときの仕入価格とは異なるわけです。お客様にとっては「700円の価値」であっても、S社が支払っているのは「700円」ではないわけですね。このあたりは提案側のテクニックですね。

お客様は販売価格で考える。原価では考えない

 最近、とある家電量販店が「現金キャッシュバッグ」を「(その家電量販店で使える)商品券キャッシュバッグ」に変更しましたが、原理はこのテクニックと一緒です。家電量販店でしか使えない商品券ならば、確実に売上が自社に戻ってきますし、自社の実質な負担は「商品原価」ですから、「現金」をキャッシュバッグするよりも、家電量販店にとってはるかにお得なわけです。

 そんなこんな、A社の営業さんといろんなお話しをさせてもらって、「じゃあ、当日、引越しの方よろしくお願いしますね」ということになりました。玄関までお見送りをして、営業さんが出ていかれた後、ドアの覗き穴から営業さんを見ていたんですね。メチャクチャいやらしい人間で本当にごめんなさい。「受注とれた!」みたいな感じでガッツポーズでもしないかな、と思って。興味本位です。

 そうしたら、ドアに向かって深々とお礼。そして、エレベーターがきて、エレベーターに乗る前にも、軽く一礼をされていました。これが今回、一連の引越し屋さんとのやり取りの中で一番の驚きでした。教育をしっかりされている会社なんでしょうか、A社。きちんとマニュアルに退出後のことが書かれていて、しかもおそらく「深々とお礼」というような定性的な表現ではなく、きっと「深々と『5秒間』お礼」というように「具体的な数字」が書かれている気がしました。

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