著者:石田 麻琴

螺旋階段をのぼっているようで、のぼっていない。【no.0174】

(前回のコラムを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)

【前回までのあらすじ】

 アイドル芸能事務所「マイドル」を立ち上げた石田さんは、「メガネ歴女」の人気投票オーディションサイト「マイドル」を立ち上げた。第2のサイトとして「メガネ納言」の立ち上げを決意。サイトを管理者のF次郎くんとのミーティングで、「やりきってもらう」までが仕事だと決意する。それからF次郎くんと石田さんは毎朝のミーティングを始めたが、石田さんには他の仕事もあり・・

*石田さんは何を話せば良いのか、一瞬固まってしまった

 ついにキレてしまったF次郎くんに、石田さんはぽっかり口を空け、唖然としてしまいました。まるで時が止まったかのように、ドラマのワンシーンのような時間が続きました。

 「どうなんですか!石田さんは毎日やってるんですか!やってないでしょう!自分がやってないことを僕に要求しないでくださいよ!!」

 確かに、石田さんはやっていませんでした。ただ、石田さんはマイドルの立ち上げ、「メガネ歴女」サイトの成長、B美さんの発掘など、いままで自分でビジネスを立ち上げてきたその経験がありました。毎日毎日、数字をチェックして、自分が何をしたかを残してはいませんでしたが、感覚として施策と数字が身体の中にありました。石田さんにとっては習慣のようなものです。

 でも、F次郎くんにそれを伝えたとしてどうでしょう。納得してもらえるでしょうか。「俺はできるからやらなくていいんだ」なんて言えるでしょうか。言ったら、終わりです。信頼関係がなくなってしまうでしょう。かといって、「じゃあ、明日から俺もやるわ」というのが正しいのか。いや、俺にだってやる仕事がたくさんあるんだーー!!

 この数秒間の間に、石田さんは頭の中をめまぐるしく回転させました。どんな方向にいっても、言い訳になってしまいそうです。より状況が悪くなってしまいそうな気がします。

*毎日数字を見ることは、毎日決算をしているようなもの

 「そうか、スタッフは、自分と同じことを社長にも要求するのか、そりゃそうだよな、俺が見本にならなきゃいけないんだよな」。石田さんは決断しました。「わかった。F次郎。見本を見せなくて申し訳なかった。俺も、明日からやるよ。ミーティングもやったりやらなかったりはやめる」。石田さんはF次郎くんに宣言をしました。「よーし、明日からやるぞぉ!F次郎、どっちが売上を伸ばせるか、勝負だ!!」

 石田さんが「メガネ歴女」、F次郎くんが「メガネ納言」の数字と施策を話す毎朝のミーティングがスタートしました。これにより「メガネ歴女」と「メガネ納言」のサイトは、順調に成長していきました。だって、毎日数字を見るということは、毎日決算をしているようなものなのですから。年に12回数字を見る会社と、年に365回数字を見る会社のどちらが強い会社かと考えれば、答えは簡単です。現代の日本最強の経営者のひとりである、某通信会社の社長も、早い時期から毎日決算の仕組みを整えていたといいます。

 そして、石田さんのアイドル芸能事務所「マイドル」は三つ目、四つ目のサイト、二人目、三人目のサイト管理者を雇い、同じように教育して発展させていきました。めでたしめでたし。

*山あり谷ありというか、結局同じことの繰り返し

 と思いきや、全然めでたくはなりませんでした。石田さんがF次郎くんと始めた毎朝のミーティング、やっぱり続きませんでした。嘘をつきました、ごめんなさい。やはりサイト管理以外の仕事を行うためにミーティングも穴を空けることが多くなりました。ミーティングが穴だらけになってくると、またF次郎くんがキレだします。「石田さん、ちゃんとやるって言ったじゃないですか!!」。石田さんはなだめます「F次郎、明日からちゃんとやるから。そうだ。仕組みを少し変えよう。仕組みを変えれば続くはずだ」。そう言って、なんかしらを変えるんですが、また同じように、数週間すると、続かなくなっているんですよねー。現実の世界でも、こういうミーティングって多いですよね。

 山あり谷あり、はいいんですが、結局同じことの繰り返し。螺旋階段をのぼっているようで、のぼっていない。そんなゴタゴタを繰り返しているうちに、「マイドル」に大変なことが起こってしまっていたのでした。

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