著者:石田 麻琴

いかにして経営者、上司に「デジタル活用」を説得するか【no.1846】

 以前、このような質問をいただいたことがあります。

 私は会社のデジタル化を進めていきたいと思っている。チームのみんなや他部署の人からもデジタル化を推進していきたいという声が上がっている。けれども、経営者がデジタル化に対して消極的で、それが「デジタルを理解していない」ことのように思える。このような時はどうすればいいか?

 デジタルに対する知識は比較的年齢の若いメンバーが有していて、普段の生活の中でもデジタルに触れる機会が多いので、年齢の高い経営陣との認識の差が広がり続けるのは仕方がないことかもしれません。しかも得てして年齢が若い人の方が役職は低く、年齢が高い人の方が役職は高いことが通常ですから、本質的にデジタル化が避けられない状態だったとしても、社内での発言力自体が強くないわけで、いかに突破するかは難易度が高いわけです。というか、こういう状態が様々なところで起こっているからこそ、転職市場は活況なのかもしれません。

 さて、このような「経営者(上長)が聞く耳をもってくれない」状況をいかにして打開するかです。

 まず前提としてですが、すでに社内での関係性ができあがってしまっている以上、相対的に立場が低い人から高い立場の人を説得するには相当な勇気とパワーがいります。既存で進んでいる事業に関する予算ならば比較的簡単に取れるにも関わらず、新しい取り組みの予算、こと「デジタル」に関することはその成果も含めて承認を得るために激しく追及されることもしばしばです。まあ、これが嫌になって転職する方も多そうです。(二度目)

 具体的な解決方法ではありませんが、まず考え方として「人は人に100回言われても変わらないが、自分で気づけば一発で変わる」ということを覚えておいた方がいいかもしれません。経営者や上長に「これからはデジタル化が必要なんです」と伝えてもあまり状況が変わらないならば、「自分自身で気づいてもらうためにはどうしたらいいか?」その機会をどうやって体験してもらうかを考えた方がいいかもしれません。

 経営者や上長と一緒に本を読んだり、セミナーに参加したりして「学ぶ機会をつくる」というのはどうでしょうか。自分はデジタルが必要だと思っている、上司はデジタルがそこまで必要だとは思っていない。このような状態のなかで、デジタル化の必要性を説いても上司に「ピンときてもらう」「腹落ちしてもらう」のは簡単ではないでしょう。一緒に学び、それを社内にいかに還元できるかを議論し、会社の未来という同じ方向を向くことで何かに気づいてもらうことができないでしょうか。

 「俺はそんなのはいいよ」とともに学ぶことすら拒まれる可能性もあります。次の手として、経営者や上長に、彼らよりも立場が上の人と話してもらうのはどうでしょうか。社長に対する会長や、課長に対する部長など、より立場の高い人にデジタルを理解している方がいるならば、その方を通じて啓もうをしてもらうという手です。ただ社内の立場や関係性上、「各々の判断を尊重して口は出さない」という文化のある会社さんもあるでしょう。

 さらに一手は外部の人間を招聘して、その人にデジタルの有用性を説いてもらう手です。前述と同様、「より立場が上の人」の意見でコロッと考え方が変わる可能性があります。そのためにも、社内の人間だけではなく社外の人間とのネットワークをつくっておくことが重要なのかもしれません。会社の内部と外部を巻き込みながら、自社の改革につなげていく。アフターコロナ/ウィズコロナは、「個人の時代」の本当のスタートなのかもしれませんね。