著者:石田 麻琴

マーケティングしやすく自社のサービスを変える【no.2092】

 マーケティングしやすい商材に自社のサービスを変えることはできるのか。今回のECMJコラムは少し変化球な内容で書いていきます。

「BtoCビジネス」はデータが取りやすい

 私(石田)はJDMCという団体である研究会の座長を担当しています。「マーケティングにおけるデータ活用研究会」という研究会です。2016年からスタートして、すでに6期(7期?)目になっている研究会です。

 この研究会のテーマは「データ活用」。研究会のリーダーを務めている私(のECMJ)が圧倒的に小規模な会社で、ほかのメンバーは大手企業ばかり。ソリューションを提供するベンダー企業と、ソリューションを活用するユーザー企業が一緒になって意見交換をしています。

 研究会内での意見交換で、私がECにおけるデータ活用について共有するタイミングがありました。この研究会のメンバーは「BtoBビジネス」の企業が多く、「BtoCビジネス」はデータが取りやすくで良いですね、と。(すいません。あくまでテーマの例として挙げさせてもらっています)

「BtoBビジネス」はデータの流れがわかりづらい

 そう。「BtoCビジネス」はデータが取りやすいんですよね。ゆえにデータ活用がしやすい。こと、私が専門としているECはデータがすべての世界といっても過言ではありません。たとえばネットショップをオープンすれば自動的に毎日のセッションがデータ化されます。さらに商品の販売を開始すれば、毎日注文と売上のデータが落ちてきます。ネット広告を掲載すれば、翌日にはその成果の片鱗をデータで確認することができます。そして、それらのデータを活用して次の施策を試すことができる、と。

 それに対して「BtoBビジネス」です。「BtoBビジネス」はECのようにデータの流れが一気通貫にはなりません。むしろ途中でリアルの商談がはさまったり、社内稟議をあげたり、予算を獲得すしたり、受注への流れがブチブチと切れていきます。もしも仮に有効な施策を打てたとしても、「先方のお客様都合」で受注に至らない可能性も大いにありえるのです。そう考えれば、「BtoCビジネス」はデータが取りづらい、と言えます。

 当然ながら、「BtoBビジネス」のデータが取りづらいのは他社も一緒なのですから、悲観しすぎる必要はありません。そして、限られた情報の中からなにかのコツを掴めば、大きなチャンスに変わります。それは前提として、「BtoBビジネス」を「マーケティングしやすい商材に自社のサービスを変える」ことはできないのか。ここを考えるのがポイントなのです。

Zoomはなぜ加速的に拡がったのか

 たとえば、コロナ禍で一気に伸びた需要のひとつとして「オンライン会議」があげられます。特にその中でも大躍進したのがオンライン会議ツールのZoom。ちなみにZoom社のブログを見ると「Zoomを利用した1日あたりのミーティング参加者数は、全世界で2019年12月時点では1,000万人でしたが、2020年4月には3億人に上りました」とあります。まさに爆発的に利用が伸びたのでした。

 オンライン会議ツールは元々「BtoBビジネス」です。従来のオンライン会議ツールは「資料請求をして、担当者にプレゼンいただき、契約して」という、いわゆる「BtoBビジネス」の契約モデルが主でした。ご存じのとおり、Zoomは資料請求も担当者との交渉もはさまず、完全なECのフローのもと、その場で決済(有料版)し利用することができます。「BtoBビジネス」をEC化したもの、であるとも言えます。

 「BtoBビジネス」でもこのZoomと同じような状態をつくることで、データ活用がしやすいビジネスモデルに変化させることができます。まさに、より「マーケティングしやすい状態」です。なぜZoomがここまで急加速で拡がったのか。自社の商材の無料版をつくったり、小分けにしたり、ライト版をつくったり。「マーケティングしやすい商材に自社のサービスを変える」ことができないか。デジタル化が進む市場の中で、この視点も持っておくと良いかもしれません。