著者:石田 麻琴

「市場規模」があるということは、競合がいるということ【no.1675】

 友人がとあるベンチャー企業に誘われているというのです。具体的な事業内容はわかりません。コンセプトといえるほどなのかわかりませんが、そのベンチャー企業のテーマ・狙いのようなものは聞きました。フリーランスの仕事の大部分をやめなければいけなくなるため、本人としても迷っているようです。まあ、私として彼にアドバイスできることはありません。

*「市場規模はある」だからベンチャーをする、という考え方

 中途半端な情報しか得ていない私が意見するのは良くないと思い「うんうん、そうなんだ」と聞いていたのですが、話を伺う中で気になったのは「市場規模」の話でした。

 このベンチャー企業ですが、数字を大きく掲げており「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」の売上を目標にしているというのです。創業者にバックグラウンドがあったり、すでに得意先が決まっていたり、何かしらの「伸びる理由」があるのでしょうが、事業を展開する領域に100億円、1,000億円それ以上の「市場規模」があるため「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」の売上成長に自信を持っているようなのです。

 この「市場規模があって、ニーズを適えきれていないから、市場をガッツリ取りにいけるはずだ」という考え方は、いかにも大手企業のサラリーマンが会社のお金でビジネススクールに通った後に言いそうなことです。

*「市場規模」がある時点でカテゴライズされている

 「市場規模があって、ニーズを適えきれていないから、市場をガッツリ取りにいけるはずだ」だから「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」。この考え方はいくつかの点でズレています。

 すでに「市場規模」が露見している時点でいまから取り組んでも急成長は見込めません。「市場規模」が図れるということは、市場という仕事のジャンルがカテゴライズされていることになります。そしてそのカテゴライズされたジャンルは、過去のどこかのベンチャー企業たちが作り上げてきたものです。ジャンルと市場規模だけがあってそれを埋めている企業がない、ということは世の中にありえません。「市場規模」があるということは、何万歩も先を行っている競合の会社があるということです。

 「市場規模がある=急成長が見込める」は嘘にはなりませんが、何万歩も先を行っている競合の会社がある時点で「急成長する」は非現実的です。もし「急成長が見込める」可能性があるとすれば、全く逆でしょう。「市場規模」を図ることができない、いまだカテゴライズされていない(既存の枠ではカテゴライズできない)仕事ならば、急成長をする可能性が十分あります。

*「市場規模」がある時点でスモールスタートになる

 もしすでにカテゴライズされている「市場規模」のあるジャンルにチャレンジするならば、大小の競合の会社がある中で「違い」「差別性」を出さなければいけません。「違い」はスモールスタートです。現状の市場で満たされきれていない小さなニーズや、時代の変化から薄っすらとみえるニーズをいち早く捉え、専門性を出して「小さくてもキラリと光る」ダイヤモンドのような事業を目指していくのです。大きなニーズはすでに先行者が満たしています。

 そう考えるとさらに「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」は非現実のように感じます。現実には「違い」となる小さなニーズを拾いながら、試行錯誤して新しい市場の可能性を探し、運とタイミングが合えば急成長するか、でしょう。まだベンチャー企業としての運営を回していない時点から「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」を言い切ることができるわけありません。中小企業であれば「市場規模」は無限大です。「市場規模」という言葉は言い訳でしかありません。