著者:石田 麻琴

私が社長から教えてもらったこと。その1【no.1734】

 私事な部分もあるのだが、前職の会社の社長がゴールデンウイーク前に亡くなった。膵臓癌だったようで、42歳という若さで亡くなってしまった。

 前職の会社は私が初めて社会人となった会社であり、唯一のサラリーマンを経験した会社だった。なので、この社長が唯一の「上司」ということになる。入社当時は10名ほどのベンチャー企業だった。よく最初に勤めた会社が重要だというけれど、この社長が私に仕事を教えてくれたといっても過言ではない。そしてECMJのコンサルティングも当然ながら前職の経験、社長の教えが基になっている。

 この人に出会わなければいまの自分はない、と心の底から言える。

*会社に入社して最初の仕事

 ご存知の方も多いと思うが、スポーツの新聞記者志望だった私は就職活動に落ち続け、大学卒業後フリーターを2年弱やっていた。両親からも冷ややかな目で見られるようになり、自分としてもいい加減就職をしなければと少ない選択肢の中で探し出したのが前職の会社だった。急成長中のEコマースベンチャー企業と書いてあったが、正直「Eコマース」が何なのかすらよくわかってなかった。社長もよく採用してくれたと思う。

 2005年の7月下旬。社会人として初めて出社をした。もちろん同期などはおらず、「今日からよろしくお願いします」と数人の前で挨拶をして終了。「石田くんの席はここだよ」という指の先には開封されていないDELLのパソコンがのっていた。パソコンをセッティングからおこなうのは初めての経験だった。どうすればいいかわからずオロオロしていると周りの先輩方が助けてくれた。社長は「自分で考えてやって」という感じだったが。

 パソコンのセッティングが終わると会議室(というか会議スペース)に呼ばれた。「石田くんの仕事なんだけど、モバイル店の引き継ぎをやってもらうから。来週、モバイル担当の子がアメリカに行っちゃうから、その子から引き継いで」けっして「教えてもらって」というような表現は使わない。社長は「受け身」の姿勢が大嫌いな人なのだ。

*自分で考えて解決する、自分から話を聞く

 24歳で初めて社会人になり、特に研修期間もなく、いきなり仕事が始まり、しかも来週アメリカに行く人の仕事を今週中に覚えなければいけないという状態。いまなら「ほーそうか」という感じなのだが、当時は本当に混乱した。何が正しいのかわからないし、正しいことを教えてもらえるわけでもないので、自分で考え自分で先輩に話を聞きに行った。明確に担当が決まっているわけでもないので、誰が知っているかをリサーチするところからだ。

 社長と一緒に仕事をした人間なら誰しも経験する「完全なる無茶振り」なのだが、長い目線でいえば、これで非常に自分を鍛えてもらうことができた。自分で考えるから新しい発想が出てくるし、自分で考えるからそれが付加価値になる。社内のデータ管理や受注システムもアクセスとエクセルを使った内製だった。できる限り既存のシステムを使わないというところも「自分の頭で考える」「自分で解決する」をモットーにしていたこの会社らしい。

*いきなり新卒採用を任せてもらうことに

 最初の3ヵ月くらいは仕事に慣れなかったこともあり、毎日辞めたいと思っていた。社長は厳しかったし、当時の私には怖かった。そんな中で3ヵ月後くらいから徐々に社内でも認められ始め、5ヵ月くらい経った頃だろうか。社長に呼ばれ、翌年の春にスタートする新卒採用の担当を任せてもらえることになった。自分としては「入社して半年も経っていない人間が採用担当になってオーケーか」がめちゃくちゃ気になっていたのだが。

 採用担当は「売上アップ」「マーケティング」などの花形の仕事ではない地味な仕事だとその時は思っていたのだが、いま思えば採用担当を任せられるのはとても期待してもらえていたのかもしれない。