著者:石田 麻琴

仕事に時間を合わせるのではなく「時間に仕事を合わせる」【no.1756】

 先日、とある方からこんな言葉を聞いた。「仕事に時間を合わせるのではなく、時間に仕事を合わせるのが大事」。ある勉強会での「教え」のようなのでこの言葉を聞いたことがある方もいるかもしれない。

*時間に仕事を合わせるの意味

 多くの人は仕事に時間を合わせてしまっている、という。だからいつまで経っても残業がなくならなかったり、休日の出勤がなくならなかったりする。そして「いつまで経っても時間が足りない」理由は仕事に時間を合わせてしまっているからかもしれないし、「いつまで経っても成果に繋がらない」のも仕事を時間に合わせてしまっているからかもしれない。

 仕事においてのスキルや資本(予算)にはどの会社もそれぞれだし、組織や人財のレベルもそれぞれである。けれども、ひとりに与えられた時間が「1日24時間」であることは、どの会社もどの組織もどの人財も一緒であり、この「1日24時間」の使い方こそが仕事の成果を分けていくというのである。まさに「タイムイズマネー」というわけだ。

*時間に仕事を合わせると何が起こるか

 仕事に時間を合わせるならば、向き合える仕事に際限がなくなる。定時外の残業や休日出勤を「可」とするならば、休日の時間を削って、睡眠時間を削って、さらにはプライベートの時間を削って際限なく仕事を入れていくことが可能になる。もちろん、「1日24時間」は一緒なのではあるが。

 ただ、仕事だけでは充実した人生にはなりえないということはすでに周知のことであるし、(たとえ結果的に仕事の成果のためだとしても)十分な睡眠時間や非日常を楽しむプライベートや家族やサードプレイスで過ごす休日の時間が大切であることも周知の事実である。さらにいわゆる働き方改革のため「定時外」の仕事も見直されつつある。

 となると、時間に仕事を合わせるとするならば、「必ず時間からあぶれてしまう仕事」が出てしまうわけだ。

*時間からあぶれてしまう仕事を理解することの価値

 この「時間からあぶれてしまう仕事」が出ることがいくつかの観点で見逃せない価値になる。

 ひとつは、「時間からあぶれてしまう仕事」は「そもそも必要のない仕事なのでは」というひとつの発見である。時間に仕事を合わせると、当然「成果に繋がりやすい仕事」を優先することになる。「対お客様」の仕事を時間に優先するならば、時間からあぶれてしまった「成果に繋がりやすい仕事」はもしかしたら「そもそも必要のなかった仕事」だったのかもしれない。

 そして逆の観点もある。時間に仕事を合わせたときに「対お客様」の仕事を優先しすぎたとき、場合によって「重要度よりも緊急度の高い仕事を優先してしまっている」ことに気づくこともある。事業や組織の本質的な課題(つまり重要度の高い)を解決することにより、現在や未来の時間を大幅に削減できる可能性がある。こういったケースの場合は、時間に仕事を合わせようとしても仕事に時間を合わせるような状態がどうしても続いてしまう。

*残業や休日出勤をしないと成り立たない仕事は

 急成長中のベンチャー企業や閑散期と繁忙期の差があまりに激しい業界は別として、残業や休日出勤をしないと成り立たないような仕事は、そもそものビジネスモデルが破綻してしまっている可能性がある。これはスタッフや従業員の責任ではなく、経営者の責任になる。「量」をこなすのは大事だが、付加価値を「量」でカバーしなければいけない仕事は困る。

 この数年で国が「働き方改革」に大きく舵を切ったことにより、「定時内」ではビジネスが回らない(つまり、会社を回す利益を確保することができない)会社と事業が顕在化しつつある。いわゆる「ブラック企業」はその存在がより厳しくなる。そもそもの「時間のパイ」はより小さくなるわけだから、ITシステムの活用含め、より「時間管理」が大切になってくるかもしれない。