著者:石田 麻琴

「割り算の数値項目」を行動目標にしないこと【no.1947】

 Eコマース担当者が日々確認しておきたい数値項目としてお伝えしているのが「売上」「アクセス数(セッション数)」「受注件数」「転換率(コンバージョン率)」「客単価」の5つの項目です。

 各々の数値項目については詳しい説明が不要かと思いますが、この5つの数値項目はその性質上、2つに分類することができるんですね。「売上」「アクセス数(セッション数)」「受注件数」の3つと、「転換率(コンバージョン率)」「客単価」の2つです。この2つの分類理由ってピンときますかね。前者が「積み重ねの数値項目」であり、後者が「割り算の数値項目」というところですよね。

 数値項目として日々確認し、自分たちのマーケティング活動の成果検証をする際に、ちょっと気をつけたいのが後者の「割り算の数値項目」です。

 計算式にすると、「転換率(コンバージョン率)」は「受注件数÷アクセス数(セッション数)」で計算され、「客単価」は「売上÷受注件数」で計算されます。割り算で計算される数値項目の特徴は、「高ければ数値として良い。低ければ数値として良くない」と一概に言えないことなんですよね。なぜなら、割り算で計算される数値項目には「分母」と「分子」があるんですよね。

 たとえば「転換率(コンバージョン率)」。一般的に転換率の変化を語るノウハウや成功事例のセミナーでは、「転換率が下がった!」をアピールするものはありません。基本的に「転換率が上がった!」ことをアピールするものなので、「転換率は上がると良いもの」というイメージがあるのですが、「転換率が上がる」ことはふたつのパターンがあります。「分子」の値が大きくなることと、「分母」の値が小さくなることです。

 転換率の計算方法は「受注件数÷アクセス数(セッション数)」なわけですから、「分子」の値が大きくなることとは受注件数が多くなることです。「分母」であるアクセス数が一定で「分子」である受注件数が増えれば転換率は上がります。これはどちらかといえば良いケースです。逆に、「分母」の値であるアクセス数が減ることで転換率が上がってしまうケースもあります。「分子」である受注件数が一定で「分母」であるアクセス数が下がった場合、これも計算上、転換率が上がってしまうんですね。はたして、このケースが良いと言えるのか、という話です。

 一般的なEコマースの成長として、アクセス数が増えれば転換率は下がっていきます。商品の知名度や認知度が広がり、インターネット上での露出度が高まることによって一見のお客様や「興味ないけど目についてしまった」系のお客様が増えるからなんですね。アクセス数の伸びに対して受注件数の伸びは比例しないものの、それでもトータルの受注件数と売上は伸びていきます。ただ、アクセス数がそれ以上に伸びるため、売上があがっても転換率はガンガン下がっていく、という現象がおきます。

 転換率という数値項目を単体でみると下がることは「良くないこと」であるわけですが、Eコマースというビジネス全体からすると転換率が下がることは「健全なこと」であるわけです。これが「割り算の数値項目」の難しいところであって、「数値が上がって本当に良かったのか。下がって本当に悪かったのか」その内訳をきちんと見なければ判断ができないんですね。

 そういう点でいうと、「転換率」という割り算で計算する数値項目を何らかの「行動目標」にするのは間違っているわけです。といっても、「ウチのサイトは転換率が低い!」とか絶対的な数値項目のように評価し、目標化してしまっている会社さんも多いのが現実。「直帰率」や「離脱率」についても同じような捉え方をしてしまっている会社さんが多いので気をつけましょう。みなさんがチームに周知してあげてくださいね。あまり意味ないよ、って。