ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

世の中のトレンドやニーズは先読みできるものなのか?【no.1990】

 世の中のトレンドやニーズは先読みできるものなのか?

 とあるECのシステム会社さんと話していたときに、興味深いことをお聞きしました。

インスタントカートにここまでニーズがあると思っていたか?

 ECのカートシステム。思いあたる会社さんがいくつかあると思います。後発として10年弱前に登場したのがいわゆる「インスタントカート」のECシステムです。誰でも簡単に無料でオンラインショップを開設できますよ、というカートですね。

 インスタントカートがEC業界に登場したときのこと。STORES(ストアーズ)さんとBASE(ベイス)さんの2社がほぼ同時期に登場しました。ストアーズさんは一度ZOZOのグループに入りますが、その後ZOZO出ていまに至ります。ベイスさんは順調に店舗数を拡大。現在は160万店舗を超えるまでになり、2019年にマザーズ上場を果たしました。「インスタントカートがここまで躍進すると思っていたか?」という話になったんです。

 答えは「まったくここまで成長すると思っていかなった」でした。このシステム会社さんはいまでも業界でもっとも知名度があるカートシステムのひとつ。が、その会社さんでもインスタントカートの躍進は予想できなかったということ。

我々の想像のまったく外側にニーズがあった

 インスタントカートが登場したとき、わたしもその成長と必要性に懐疑的でした。EC事業で売上をつくる、というのはオンラインショップを構えることではありません。オンラインショップを運用することです。インスタントカートには商品を載せることはできます。しかし「細かい提案」や「集客・認知」を拡大するには不十分だと思ったのですね。簡単にいえば「インスタントカートで売れるのか」と。

 ただ、なぜここまでインスタントカートが躍進したのか。それを考えると、「売れるか売れないかよりも、単純に自分(店舗や会社)独自のオンラインショップを持ちたい」という潜在層が存在していたということです。そしてその「とりあえずオンラインショップ出したい層」を取り込むことができた。これが思ったとおりなのか、思った以上なのか、聞いてみないとわかりません。ただ我々の想像のまったく外側にニーズがあったというわけです。

 このインスタントカートの話を勉強会のメンバーとの食事会で話しました。すると、同じような面白い話が出たのです。「近年でいわゆる『世界的な商品ブランド』をつくった会社といえばテスラだと思うのだけど、イーロン・マスクはこの未来を想像できていたのか」という話でした。

人々が亜流をスタンダードに変える

 自動車だと例えばメルセデスやBMW、アパレルであればシャネルやグッチなど。ブランドは自分たちが生まれる前からそこに存在していたもののように感じます。ブランドがブランドになる過程の見えないものであることがほとんどです。しかしテスラというブランドについてはその成長の過程を我々は見てきているだろうと。ここについては「予想できていたのではないか」「予想まではできていないのではないか」の両方の意見がメンバー内でも出ました。「予想できていなかった」の方が多かったように思います。

 ただ、「予想はできていなかった」としても、「運がよかった」ではないわけです。イーロン・マスクさん自身の力で「それをスタンダードなものにした」のだと思います。これは日本のユニクロさんも同じです。世の中のなにもが最初は亜流です。人々がその亜流をスタンダードなものに変えていくわけです。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。