ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

お客様に楽しんでもらう。お客様に知ってもらう【no.2041】

 ECの重要テーマである「お客様を楽しんでもらう仕事とお客様に知ってもらうための仕事」。これはEC事業がうまく回っていない多くの会社で曖昧になっているポイントです。

ネットショップは実態がない

 ECは「お客様を楽しんでもらう仕事」と「お客様に知ってもらうための仕事」を同時に回していかなければいけません。「お客様に楽しんでもらうための仕事」を頑張っている事業者が多いのが現実です。「お客様に知ってもらうための仕事」に力を入れられていないことが多いと感じます。EC事業において「お客様に楽しんでもらうための仕事」と「お客様に知ってもらうための仕事」は別物です。

 これがたとえば実店舗のビジネスの場合です。実店舗という実態が存在し、実店舗に至るための導線が存在します。その導線を動いているお客様が興味を持ってくれ、お客様として来店をしてくれる。こんなことがありえます。実店舗は存在自体が「お客様に楽しんでもらうための仕事」と「お客様に知ってもらうための仕事」の両方を兼ね備えています。

 しかしネットショップの場合、実態がありません。インターネットという仮想空間のどこかに存在しているだけです。Eコマースはその存在が「お客様に知ってもらう」ことにはならないのです。ネットショップを立ち上げたとしても、「お客様に知ってもらうための仕事」をして認知・アクセスしてもらえなければ、ショップはお客様にとって存在していないものと同じなのです。

「お客様に知ってもらうための仕事」をつくる

 ただ、EC事業が上手く回っていない多くの会社が「お客様に楽しんでもらうための仕事」を日々こなしてしまっています。新商品の発売や登録、商品ページの画像の入れ替え。メルマガの発行、バックオフィス系の受注処理やカスタマーサポートの仕事。どちらかといえば「お客様に楽しんでもらうための仕事」のうちに入るでしょう。大切なのは「お客様に知ってもらうための仕事」の視点を持つことです。そして「お客様に知ってもらうための仕事=集客=ネット広告」ではありません。

 「お客様に知ってもらうための仕事」をつくるポイント。「お客様がどうやって自社のネットショップを知ってくれたか」。「どうやったら知ってもらえるか(もらえそうか)」。これを考えることです。前者は、いまショップにアクセスしているお客様が「どうやって知ってくれたか」を分析する必要があります。後者であればお客様の動きを予測・整理して、「お客様の思考の流れの中に、自社の商品を置くこと」がポイントになります。

売上ゼロの立ち上げフェイズをどう突破するか

 ここからはEC事業の「売上ゼロの立ち上げフェイズ」についてお話します。

 まず売上ゼロの立ち上げフェイズをどう突破するかです。EC事業を軌道にのせ、成功に導くために一番難しいのがこの立ち上げフェイズです。「いつどのタイミングで」売上があがるか、アクセスがくるのかわからないからです。そのわからない中、ECの運営業務を日々続けていかなければいけません。

 Eコマース事業の成功のきっかけはいつでも「商品」です。ヒット商品をつくるのは立ち上げ当初のショップでは難しいかもしれません。しかし、たまに売れる商品やアクセスがある商品、検索にヒットする商品など、「ヒット商品の手前」を用意すること難しいことではないと思います。そう考えれば、初期フェイズでまず実践するべきことは「商品数を増やす」ことです。

「商品数を増やす」はECの重要なポイントを満たす

 「商品数を増やす」は、EC業務においてふたつの重要なポイントを兼ね備えています。ひとつは品ぞろえの強化により、お客様に商品選びを「より楽しんでもらえる」こと。もうひとつはネット検索からのアクセスがより見込めるようになること。つまりお客様に「知ってもらえる」可能性が高くなることです。

 ECには「お客様に楽しんでもらう仕事」と「お客様に知ってもらう仕事」のふたつがあることを書きました。「商品数を増やす」は、「楽しんでもらう」「知ってもらう」の両方を高める仕事です。売上ゼロの立ち上げフェイズで最初にやることは「商品数を増やす」仕事です。

 基本線は「どんどん商品数を増やす」ことです。ただ、より成果が出やすい商品の増やし方があります。「市場をみる」のです。つまり、ECの市場で検索されているもの、売れているものを分析します。それと同じ商品や似た商品、同じ要素をもっている商品を増やす。そうすることでより効率的に成果に結びつけることができるのです。

単品Eコマースの場合はどうするか

 では「単品Eコマースの場合はどうするか」です。

 単品ECとは「少ない商品数でネットショップを運営する」Eコマースです。健康食品や美容系商材のショップが単品Eコマースにあたることが多いです。単品ECはその性質上、商品数を増やす戦略を取らないケースも多く見受けられます。この場合は、以下の要件を満たしていないと立ち上げフェイズの突破は難しいでしょう。

単品ECの立ち上げ要件

 まずブランドや商品自体に認知があるケース。リアルでブランド認知があれば、お客様の側からネットショップを探しあて商品を購入してくれます。またインスタグラマーやYouTuber、集客力のある特定のメディアと組んでネットショップを立ち上げた場合も、売上ゼロのフェイズを突破するのは難しいことではありません。

 次に、利益率が非常に高いこと。単品ECの多くがこの特性を持ち、多くの予算を販促広告費に回しています。単品Eコマースでは「利益-広告費>0」にするため、CPAやLTV、ROASなどの成果指標を細かく分析して広告戦略をつくっていきます。「商品×ターゲット×集客」のバランスが「利益-広告費>0」を突破するまでマーケティングと改善を回していくのです。

 最後に、売れることがすでにわかっているケースです。市場分析をすることで「出した瞬間に売れる(アクセスが集まる)」商品をつくるのです。いま売れている健康食品や美容系商材に被せて自社商品が出てきたとすれば、お客様にとって必ず比較の対象になります。そして、そこに選択動機があれば購入の対象になるわけです。

いかにして「比較と選択の対象」になるか

 「売れることがわかっている商品をつくる」はスピード感と勇気と度胸が必要です。通常ではなかなか手を出せない芸当です。ただひとつだけ、ECのマーケティングにおける重要なポイントが書かれています。それは「インターネット検索の下に自社商品が出てきたとすれば、お客様にとって必ず比較の対象になり、選択動機があれば購入の対象になる」というところです。つまり、ECが売れないほとんどの理由は「比較と選択の対象になっていない」なのです。

 いかにしてお客様の「比較の対象」になるか。いかにしてお客様の「選択の対象」になるか。この視点を持っているだけで、Eコマースの成長速度が何倍も早くなります。「お客様に知ってもらうためには」の仕事ともつながってくる部分です。

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カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 3.Eコマースの収益アップ, 8.Eコマースの集客

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。