ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

EC事業における多店舗展開の考え方【no.2048】

 今回のコラムでは「多店舗展開の考え方」についてお話ししていきます。

避けては通れない「多店舗展開」

 Eコマース事業を拡大していく上で避けては通れないのが「多店舗展開」です。多店舗展開とは、同じ店舗ブランドを複数のモールや自社サイトで立ち上げることです。たとえば、仮に「ECMJショップ」という自社サイトがあったとします。その店舗を楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazon・・と開していくイメージです。多店舗展開を検討されている方やすでに多店舗展開をしている事業者さんもいるかと思います。

 多店舗展開の考え方を書く前に、まず自社サイトとショッピングモール、いずれの出店からスタートするかについて再度説明します。自社サイトを選択するか、ショッピングモールを選択するか。このポイントは、リアルのブランド認知があるか否かです。

世界観が統一できる自社サイト

 リアルをやっていないネット専業の事業者は、まずモールからの出店がおすすめです。リアルをおこなっていたとしても、メーカー・問屋さんな「自社が表に出ない」事業者さんもモールからのスタートが向いています。そう考えると自社サイトスタートの事業者は限られるようにも見えます。

 ただ、集客導線によっては自社サイトでのスタートが向くこともあります。SNSを軸にして集客や発信、提案をおこなえる場合です。このケースではECサイトを「決済をするため」に注力して活用することになります。この場合、自社サイトとショッピングモールのいずれの選択も可能になります。こういったビジネスモデルの場合、基本的に「自社オリジナル商品(いわゆるD2Cビジネス)」でしょうから、より世界観が統一できる自社サイトが向いています。

常に選択権はお客様がもっている

 さて多店舗展開です。ネットショップが多店舗展開を検討しなければいけない理由。それは「お客様がもつ選択の広さ」にあります。お客様はEコマース運営者が思っている以上にEコマースのことを知っています。いつどのショッピングモールで買えばポイントが多いか。自社サイトとショッピングモールでどのような特典の違いがあるか。これらを常にチェックしています。我々も消費者側として、どのショップの方が得かを探しているのではないでしょうか。

 「ウチは楽天市場でしか販売しない!」も結構です。しかし、どのショップで買うか、どのモールで買うかの選択権はお客様がもっています。ある程度それに合わせてマーケティングを展開していかなければいけません。多くのネットショップが「お客様に知られていない」わけです。「まず知ってもらう」という第一歩を踏み出すためにも多店舗展開が必要になります。

ふたつのコストを認識する必要性

 ありとあらゆるお客様が複数のサイトやアプリを使って情報を取得し、商品を探す時代です。お客様の選択肢にショップの側も合わせれば、それだけ知ってもらう機会、選んでもらう機会は増えます。多くのネットショップはここを狙っていかなければいけません。逆に自社サイト一本で戦えるのは「お客様の側から寄ってきてくれる」ショップ。そして、時間をかけて強いブランド力を目指すネットショップです。

 多店舗展開を進める上でポイントになるのが「運用コスト」です。多店舗展開を進めるためにはふたつのコストを認識する必要があります。

 ひとつは、ネットショップの出店のコストです。たとえばこれまでの楽天市場に出店していたネットショップの他に、自社サイトを開設する、Yahoo!ショッピングに出店する、Amazonに出品する。金額やロイヤルティの大小があれど、新しいコストを支払うことになります。無料のツールでECをおこなう事業者さんは、出店費用に二の足を踏んでしまうかもしれません。

運用コストをシステムで減らす

 もうひとつは、ネットショップの運用のコストです。多店舗展開をおこなうと、ネットショップの更新作業が単純に倍になります。商品登録や在庫の確認作業など、販売チャネル毎におこなわなくてはいけません。また受注の作業も倍になります。多店舗展開をした各々のショップ管理画面に入って受注処理をおこないます。多店舗展開に取り組む上でポイントになるのが、この運用のコストです。つまり、固定費です。

 そのため、多店舗展開と同時に検討したいのが在庫管理や受注管理システムの導入です。ページの更新や在庫数の更新、受注管理が一括管理できるシステムが多数存在します。このシステムの活用が多店舗展開の運用コストを下げる役割を果たしてくれます。当然、エクセルやアクセスなどを活用して運用コストを減らす工夫も大事です。しかし、ある程度受注数がまとまるとシステムの導入が必要不可欠になります。多店舗展開とシステムの導入はセットで考えた方が良いかもしれません。

 多店舗展開をすると起こりやすい課題。「ショップを立ち上げたけれど何も手を入れない」ことです。EC事業をおこなう上で売上の軸になる「本体」のサイトがあると思います。この本体のサイトにかける時間が減るのも考えものです。マーケティングに使う時間を増やすためにも、多店舗展開の「運用コスト」について考えていきましょう。

専門性のある助っ人を活用する

 EC事業を拡大するためには良い外注パートナーを探すことが重要になります。多くの会社さんで課題になるのが、ECサイトのコンテンツの制作、ECシステムの開発、リスティング広告などの広告の運用、また事業化をリードしていくコンサルティングなどです。事業規模や市場変化を考えれば、すべてを自社内で完結することは容易ではありません。上手く専門性のある助っ人を活用していきたいところです。

 ただ、依頼時に思いえがいていたような動きをしてくれない外注パートナーもあります。これは外注パートナーの問題もありますが、実は自社に問題がある場合もあります。外注パートナーに依頼する内容がブレていたり、打ち合わせのたびに内容が変更になったり、指示だしの共通言語がズレていたりすると、良い関係が気づけません。依頼する自社側も、専門知識がない状態ですから、得てしてこうしたことが起こります。こんな状況にならないためにも外注パートナー選定から気をつけたいところです。

外注パートナーの選定方法

 できれば友人や知人の紹介から外注パートナーを選ぶことを検討してみてください。EC事業を続けている事業者さんがお付き合いしている外注パートナーが安全です。困ったときは知人の事業者さんに相談ができます。外注パートナーの側も認識の違いを感じたら紹介者の方に相談することができます。間に中立な、そして両者を知っている人が立てば心配が減ります。

 また経営者を知っているというのもポイントのひとつです。外注パートナーの経営者を知って入れば比較的安心して仕事を依頼することができます。なぜ経営者なのかといえば、基本的に「辞めない」からです。どんな担当者もいつ何時、何かの理由で仕事を辞めてしまう可能性があります。お客様である我々に「転職を考えている」なんて雰囲気で接することはないはずです。辞めない人間、と付き合うということは大切なリスクヘッジになります。

「話せる」担当者を探すこと

 そして担当者です。外注パートナーの担当者さんはいつかどこかで仕事をやめてしまう可能性があります。しかし、EC事業をつづけている事業者さんが周りにおらず、外注パートナーの知り合いがいなければ担当者さんを頼りにするしかありません。多くのEC事業者がほぼ「一般的な外注先」で対応できるEC運営をおこなっています。「我々に合うシステムってどれですかね?」という質問をよくいただきます。しかし、メジャーどころのシステムでまずまかなうことができます。それよりシステム導入ののち、いかに自社なりの使い方に仕上げるかがポイントです。「じっくり付き合える」担当者さんを探してみてください。

 これはシステムに限らず、コンテンツ制作でもインターネット広告運用でも同じです。「話せる」担当者さんは、必ずEコマース事業の成長における助っ人になってくれます。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。