ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

値決めは「市場価値」の理解と「狙い」で変わる【no.2205】

(以前のコラム【no.2202】のつづき)

 少し前に値決めについてのコラムを書いた。多くの会社が値決めを「商品原価」から決めている。商品原価からの「盲目的な」値決めは商品価値を無視しており、大変もったいない。合わせて、私のネットショップ運営者時代の値決め方法についても触れた。ブランド品だと商品により、商品原価率10%程度という話を聞いたこともある。やはり、商品価値に合わせて値決めをすることが大切なのだ。

*2千円の値上げは妥当か

 そんな矢先、また新しい値決めのタイミングに遭遇した。現状の商品にある特典を付ける。その特典は2千円ほどの金額になるため、最低でも2千円以上の値上げを検討したいという話だ。ただ、この2千円の特典を付けることによって、ショップにも新たなメリットが生まれる。お客様からのリピート購入の可能性が広がるのだ。さて、この2千円の値上げは妥当なのか否かという話だった。

 この会社の商材は、BtoC商材なのだがBtoBの会社さんのまとめ買いがあるという珍しい商品だ。現在はすべての会社が商品Aを購入しており、今後商品Aに特典をつけた商品Bを主軸にしていきたいわけだ。その際、商品Aから商品Bへのリプレイスを提案しなければいけない。2千円程度ならば、商品Aから商品Bへのリプレイスはそこまでのハードルではないのではないか?と思うのは早計で、2千円程度でも社内の稟議をとおさなければいけないことがほとんどだと思う。100円でも200円でも「金額が上がる」ということ自体が「再検討」の対象になるわけだ。

*商品Bは商品Aと同じ価格で販売しよう

 私は、特典をつけた商品Bについて、商品Aと同じ価格で販売することをまず提案した。もちろん社内からの反発や意見が出ることは承知の上だ。今回、商品Bにリプレイスをしてもらうことでリピート率の向上が期待できる。だとすれば、話は「LTV(ライフタイムバリュー)」になるのだ。価格が変わる(上がる)こと自体が「再検討」の対象になる。だとしたら、商品Bへの提案が「他社商品へのリプレイスの機会を与える」ことにつながる可能性も無きにしも非ずなのだ。

 商品Aに特典をつけたものが商品Bになるのだから、仮に商品Aと商品Bが同じ価格だとするならば、商品Bを選択しない理由はない。ただ、もしも商品Bが商品Aよりも「100円」だけ高かったとしたら、やはり「一旦社内で検討させていただきます」になることはありえる。

*正解は無い、存在するのは「最適解」

 たとえば、5個で500円のシュークリームがあったとする。もしもキャンペーンで6個300円での販売になったとすれば、問題なくそのまま500円で購入するだろう。しかし、6個550円だったらどうか。5個から6個に1つ増えた分の価格は「50円」なので、たしかにお得なのだが、「5個で十分なのではないか」「プラス50円払いたくないな」という心理が働いてもおかしくない。少しでも金額が上がれば、人は「悩んで」しまうものなのだ。今回のケースにおいては、「悩む」隙すらも与えたくはなかった。

 商品Aと商品Bを同じ価格にする。もちろん、特典に2千円の原価が発生するため、一時的な利益をこのサービスは失うことにはなる。だから、結果的に同じ価格にするという結論には至らないかもしれない。このあたりは、法人のお客様との関係性や、そもそもの販売単価などにもよるだろうし、正解はわからないし、おそらく正解は無い。そこに存在するのは、「最適解」だけになる。

 今回テーマにした「値決め」は本当に難しい。もっと低ければもっと売れていたかもしれない、もっと高くても同じように売れていたかもしれないという疑念が常につきまとう。大切なのは「市場価値」を常に理解しておくことと、値決めの「狙い」を考えておくことかもしれない。

カテゴリー: 0.ECMJコラムALL, 2.Eコマースを続ける, 4.Eコマースの人財育成, 7.Eコマースのひと工夫

ishida

石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。情報産業経営者稲門会役員。日本道経会理事。 UdemyにてECマーケティング講座配信中。 こちらから