著者:石田 麻琴

デジタルトランスフォーメーションは「自社」が試されている【no.1750】

 先日NEC社からお誘いがあり、「NEC×tableau×Amazon(AWS)」のセミナーに伺った。

*締めの挨拶でNEC社の担当さんが話したこと

 13時から15時45分まで、2時間半強のセミナーが終わった後。主催であるNEC社の担当さんが話したことが印象的だった。

「私はAmazonのAWSさんと長くお付き合いしてきて、様々なセミナーでご一緒しました。ただ、今回がいままでで一番システムや機能の話が出なかったセミナーだったと思う。コンセプトやお客様に提供する価値を伝えるのが大切です。システムや機能の話をセミナーで話すのはすでに野暮かもしれない」

 確かに、このセミナーはシステムや機能の話ではなく、「お客様の課題解決」に対してどんなスタンスでアプローチしているか。3社ともシステムや機能の紹介にスポットを当ててはいなかった。

*システムや機能の紹介ではなく、3社が話していたこと

 逆にシステムや機能の紹介ではなく、3社が各々重点を置いて話していたことは何か。

 ひとつは「データ活用の本質」。これはNEC社と弊社が作成した「マーケティング分析スターターパック」でもメイン。「マーケティングツールが何かを解決してくれるのではない。マーケティングツールを活用して目的を解決する」ことを伝えてくれていたように感じる。

 そしてもうひとつ、ここが印象的だった。「いかに社内にマーケティングツールの導入・活用を浸透させていくか」ということ。「このツールは便利だよ」「このツールは売上に繋がるよ」だけではない。社内に浸透させる場合、ハードルになる可能性はどこか」ここに言及していた。

 NEC社のコンサルティング事例しかり。tableau社のブループリントしかり。Amazon社のAWSの進化の話しかり。デジタルトランスフォーメーション(DX/デジタル化)がより本質的な課題に近づいてきたのだろう。そう、ソリューションは導入するだけでは何も解決しない。

*試されるのは自社。自社をどう変革できるか

 デジタルトランスフォーメーション(DX/デジタル化)とは、企業のある一部分をデジタル化することに留まらない。たとえば、いままで実店舗の営業を主軸にしてきた会社がEC事業をする。これもひとつのデジタル化ではある。しかし一部分だけのデジタル化はデジタルトランスフォーメーションとは言いづらい。

 実店舗とECの商品情報や在庫情報や受注情報をデータ化する。そのデータをクラウド上に持たせ、ネット含めた全店舗がリアルタイムに共有をする。また、実店舗とECの顧客IDを統合し、購買行動に合わせたマーケティングをおこなう。CRMとそれをリアル×ネットで統合した「オムニチャネル戦略」ということになる。ここまでいくと、デジタルトランスフォーメーションになる。

 このようなデジタル化を推進していくとき、ポイントになるのは「自社の全社的な課題」として取り組んでいくことができるか。試されているのは「自社」なわけだ。ここはNEC社もtableau社もAmazon社も解決することはできない。

 ソリューションはある程度出尽くしている。あとは、自社の「組織・人財・文化」をいかにして変えていけるか。今回のセミナーはそんな本質的なメッセージも発信しているように感じた。

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