ECMJ(株式会社ECマーケティング人財育成)

成長期におけるEコマース業務の仕組化について【no.2045】

 成長期におけるEコマース業務の仕組化についてお話しします。

成長期のバックオフィス強化

 EC事業は売上をつくるフロントヤードと商品を供給するバックオフィスの両輪です。売上が伸び、受注が伸びると当然バックオフィスに課題が生まれてきます。まずは成長期のバックオフィス強化について考えていきましょう。

 EC事業の成長に悩んでいるお客様にヒアリングをすると、1日の仕事がバックオフィスの仕事だけで終わっているケースが見受けられます。スタート時点のフェイズでは受注も多くなく「マーケティング」に時間を使えていた。しかし月商100万円あたりからバックオフィス業務で1日が終わるというのです。Eコマース事業の成長過程の中でよくある話ですので、笑いごとではありません。

 受注処理・発送処理・お問い合わせ対応などバックオフィスの仕事で1日の仕事が終わってしまうとなると、Eコマース事業の次の段階の成長にチャレンジすることができません。Eコマース事業としてハンドリングすることができる絶対的な物量が決まってしまいます。また、新たなマーケティングに使う時間がないわけですから、市場環境が変化したときに乗り遅れ、現在いただいている売上・受注すら失ってしまうことになりかねません。ある一定の受注が入り、バックオフィスの仕事をなんとか回していると「仕事をしてしまっている」気分になれてしまうので注意が必要です。

商品マスターの作成は早めに

 月商300~500万円のフェイズでは、受注システムを必要は特段ありません。しかし、システム管理画面で注文を処理するのではなく、CSVデータを吐き出し、エクセル加工をしながらまとめて注文を処理していく、このくらいの効率化は必要になります。物流の管理(発送管理)についてもしかりです。注文票や納品書をベースにしたピッキングではなく、商品を集計してのピッキングをおこないましょう。

 そのためにも重要になるのが社内的な商品マスターの作成です。月商1,000~3,000万円のショップでも商品マスターを整備していない会社さんもいます。商品マスターの整備は取り扱い商品が多くなればなるほど難しくなります。月商100万円レベルから商品マスターの作成と整備をはじめておいた方がいいでしょう。

 特に、後々変更が面倒になるのは「商品ID(商品コード)の振り方のルール」です。商品IDは管理上のすべてのキーになるユニークな存在です。商品IDの桁数の変更が途中で入ると、商品ページの変更、在庫商品の変更、過去の受注データの変更など、多くの作業の負荷がかかります。そして変更モレがあると、データが大幅にズレます。「商品IDの今後の可能性」を理解した上で振り方のルールを決めてください。

データの変化=市場の変化

 インターネットは強者の武器です。まともに戦ったなら資本力のある企業に中小企業が勝てるわけはありません。価格競争、大量販売の展開では遅かれ早かれ大企業の餌食になってしまいます。中小企業が展開するとしたら「差別性」「付加価値」がテーマになります。低単価ではなく「違い」をつくることで高単価路線に舵をきっていかなければなりません。

 もうひとつ資本力のある企業に中小企業が勝てる要素があるとしたら「スピード」です。時代の変化、トレンドの変化にできる限り早く対応すること。大企業がお客様のニーズにこたえる前に瞬間最大風速をキャッチしてしまうのです。中小企業という組織体系が変化に対するスピーディーな対応を支えていきます。そのために活用したいのが、やはり「データ」です。毎日きちんとデータを見て、「データの変化=市場の変化」を最速でキャッチするのです。

外的要因のキャッチと対応・対処

 内的要因は自分たちでコントロールができる「施策」や「改善策」になります。しかし中小企業の場合は資本力を活かした内的要因をつくれないのも事実。データから変化の原因、つまり「外的要因」を捕まえ、対応・対処するしかありません。ポイントになるのは外的要因のキャッチの仕方と、対応・対処の仕方。そして外的要因のケースを活用したルーチン業務づくりになります。

 まず外的要因のキャッチの仕方ですが、基本は毎日同じデータを見続けることです。特に外的要因はEC事業における「アクセス数(セッション数)」に変化をもたらします。毎日継続してアクセス数を確認していれば、その変化に気づくことができます。Googleアナリティクスでは「リアルタイム」というデータを見ることができます。これはいまWEBサイトにどれくらいのアクセスがあるかを確認することができるものです。リアルタイムデータを常に閲覧できるようパソコンで設定するのも良いかもしれません。

外的要因でルーチン業務をつくる

 データとしての変化をキャッチすることができたとしたら、次に原因の特定です。ひとつは自分たちがおこなった内的要因の可能性があります。内的要因の場合はその後対策・対処の仕方は明らかです。これが外的要因だった場合、つまり「内的要因ではないと判断した場合」は原因の特定がポイントになります。お客様の検索キーワードや注文商品から原因がわかる場合もあります。しかし、もし原因がまったくわからなかった場合、お客様にご連絡して「どこでこの商品(うちのネットショップ)を知りましたか?」と素直に聞いてしまうのも手です。

 そしてこのような外的要因のケースを活用してルーチン業務をつくることが大切です。外的要因は自分たちでコントロールすることができません。しかし、外的要因が起こった後に対処・対応をすることができます。そしてその対処・対応が外的要因が起こった直後にできるか、数日後になってしまうか。起こったことさえも知らずに時間が過ぎてしまうか。そのスピードで成果がまったく異なります。一度でも起こった外的要因は「将来どこかで再度起こる可能性がある」と考えるべきです。対処と対策をまとめておくと良いでしょう。

お客様にネットショップを知ってもらう

 Eコマース事業を成長させるために重要なのは「お客様にネットショップを楽しんでもらう仕事」と同時に「お客様にネットショップを知ってもらう仕事」を進めていくことです。事業の初期の段階では、どうしてもショップの内部の改善を中心に進めてしまいます。いかにお客様にその存在を知ってもらうかを展開していかなければいけません。いわゆる「集客」です。

 Eコマースの運営業務として、商品企画/商材開拓、WEB制作、集客、運営、システム/データベース管理、物流、カスタマーサポートの7つの仕事を定義しています。この7つの仕事の中でもっとも特異で難しい仕事が「集客」です。EC事業の初期段階では、この「集客」について詰まってしまうことが多いでしょう。

 まず押さえておきたいのがインターネット経由の集客の方法です。「インターネット広告」「検索対策」「メディア」そして「リアル」の「3+1」をおぼえておいてください。お金をかけて新しいお客様に知ってもらう(インターネット広告)。お客様の検索ニーズに合わせて自社のサイト・ページを表示させる(検索対策)。話題になることによってお客様に知ってもらう(メディア)。リアルの資産を活かしインターネットにお客様を流し込む(リアル)。この4つです。

集客方法について理解する

 ゼロからECを成長させる場合、まず活用しづらいのがインターネット広告です。初期の段階では売上と利益が少ないわけです。集客へのコストは多くの事業者さんが敬遠すると思います。また「どの商品にお客様を流すか」を見極めてからネット広告を活用するのが作法です。早い段階でネット広告に手を出すと、コストだけを垂れ流す状態になってしまいます。

 また「リアル」についてですが、「3+1」の「+1」に該当するように、Eコマース事業に本格参戦する以前から実店舗で認知がある会社さんや、商品ブランドがすでに確立している会社さんしかその手段はつくれません。ネット専業の会社さんは「+1」の手段を取ることができません。逆にいえば、実店舗や商品ブランドがある会社さんは「集客」という点で非常に有利です。

 そして「メディア」。メディアは企業が運営する法人メディアと個人が運用する個人メディアに分かれます。法人メディアに自社の情報が掲載されたならば大きな集客が見込めます。しかしPRノウハウや商品の見極めが難しく、また取り上げてもらえるか他力本願です。SNSは前述した「リアル」の認知やブランド力がここでも大きく影響をおよぼします。

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石田 麻琴 / コンサルタント

株式会社ECマーケティング人財育成・代表取締役。 早稲田大学卒業後、Eコマース事業会社でネットショップ責任者を6年間経験。 BPIA常務理事。協同組合ワイズ総研理事。中小機構販路開拓支援アドバイザー。